施術の最中、厨房で火を使っているとき、現場で脚立に乗っているとき。電話はたいてい、いちばん手が離せない瞬間に鳴ります。出られなかった電話のなかに予約や見積もりの依頼があったかもしれない、と後から気になった経験は、小さな店や事務所を回している方なら一度はあるはずです。
そこで検討されることが増えているのが、AIの電話受付代行です。従来の電話代行はオペレーターが人の声で応対するサービスでしたが、AIの場合は音声AIが電話に出て、用件を聞き取り、予約を入れたり伝言を残したりします。夜間や休日も同じように対応でき、同時に何本の電話がかかってきても話し中になりにくいのが特徴です。
ただし、どんな電話でもAIに任せればよいわけではありません。この記事では、AIの電話受付代行で何が変わるのか、どんな電話に向いていてどんな電話は人が出るべきか、導入前に何を決めておけばよいかを、現場の目線で整理します。
AIの電話受付代行と、人による電話代行の違い
人のオペレーターによる電話代行は、柔軟な受け答えができるのが強みです。一方で、多くの場合は対応時間や件数に上限があり、受けた内容は「折り返しのご依頼がありました」という伝言として届く形が中心です。
AIの電話受付代行は、次のような点で性格が異なります。
- 時間帯を問わない:深夜や早朝、年末年始やお盆の休業中でも同じ品質で応答します。
- 同時着信に強い:ランチ前や月曜の朝など、電話が重なる時間帯でも順番待ちが起きにくくなります。
- 用件をその場で完結できる:空き枠を確認して予約を確定する、注文を受ける、よくある質問に答えるといった処理まで、電話の中で済ませられるものがあります。
- 応対がぶれない:営業時間、駐車場、キャンセル規定など、毎回同じ説明を正確に繰り返します。
反対に、話の流れを読んで臨機応変に対応する、相手の感情に寄り添う、といった部分はまだ人のほうが得意です。この差を理解しておくと、どこまで任せるかの線引きがしやすくなります。
出られなかった電話が、実際に失わせているもの
電話に出られないことの影響は、件数だけでは測れません。
- かけ直してもらえるとは限らない:初めての方ほど、つながらなければ次の候補に電話をかけます。
- 折り返しの手間が積み重なる:営業後に留守電を聞き、一件ずつ折り返し、つながらなければまたかけ直す。この時間は本来、休むか準備に充てたい時間です。
- 作業が中断される:施術や接客の途中で電話に出れば、目の前のお客様を待たせることになります。
- 家族や従業員の負担:電話番のために誰かを店に残す、私用の携帯に転送して休日も気が休まらない、といった状態が続きがちです。
どれくらい影響があるかは業種や地域、立地によって大きく違います。まずは自分の店の電話がいつ、どんな用件でかかってきているかを知ることが出発点になります。
ある一日の例:一人で営む整体院の場合
施術者ひとり、受付スタッフなしで営業している整体院を想定してみます。
- 7時40分:開院前、出勤途中の会社員から「今日の夕方空いていますか」と電話。AIが空き枠を確認し、18時30分で予約を確定。確認のメッセージが相手に送られます。
- 10時15分:施術中に新規の方から電話。駐車場の有無と料金体系を質問され、AIが登録済みの情報で回答。そのまま初回の予約まで入ります。
- 12時05分:昼休み中に常連の方から「腰を痛めて歩くのもつらい」と電話。AIは症状の判断はせず、要点を聞き取って緊急の伝言として院長に通知。院長が昼食の手を止めて折り返します。
- 15時30分:営業電話。AIが用件を聞き、伝言として残すだけにとどめます。施術は中断されません。
- 21時50分:閉院後、翌週の予約変更の電話。AIが変更を受け付け、カレンダーに反映。
院長がその日にしたことは、昼の一件への折り返しと、夜に伝言の一覧を確認したことだけです。大事なのは、すべてをAIが片付けたのではなく、人が出るべき一件がきちんと人に渡ったという点です。
導入前に決めておくことチェックリスト
AIの電話受付代行は、最初の設定でほぼ使い勝手が決まります。次の項目を紙に書き出してから始めるとスムーズです。
- よくかかってくる電話の種類:一週間、電話の用件をメモしておきます。予約、問い合わせ、変更、営業電話などに分けてみましょう。
- AIに完結させる用件:予約の受付、営業時間の案内、注文の受付など、決まった手順で済むものを選びます。
- 必ず人に回す用件:クレーム、体調や安全に関わる相談、高額な見積もり、取引先からの重要な連絡など。
- 人に回す方法:その場で転送するのか、緊急の伝言として通知するのか、翌営業日に折り返すのかを決めます。
- 答えてよい情報の範囲:料金、住所、駐車場、キャンセル規定など、AIに案内させる内容を正確な文章で用意します。
- 予約のルール:受け付ける時間帯、所要時間、同日予約の可否、定休日を整理します。
- 伝言の受け取り方:メール、メッセージアプリなど、自分が確実に見る場所に届くようにします。
- 自分でテスト電話をかける:お客様の立場で何度かかけて、言い回しや流れを確認します。
設定の具体的な手順はヘルプセンターにまとめています。
人が電話に出るべき場面
AIに任せないほうがよい電話は、はっきり存在します。
- 怒っている、または強く困っている方:まず気持ちを受け止める必要がある電話は、人が対応したほうが早く収まります。
- 体調や安全に関わる相談:医療や介護、設備の故障による危険など、判断を伴う内容をAIが答えるべきではありません。緊急時に案内すべき連絡先は、業種や国の制度によって異なるため、ご自身の状況に合わせて設定してください。
- 金額の大きい商談や個別見積もり:条件のすり合わせが必要な話は、要点だけ聞き取って担当者が折り返す形が向いています。
- 長年の常連や大切な取引先:「いつもの声」で話したい相手もいます。番号ごとに転送する運用が向いている場合もあります。
AIの役割は、こうした電話を見分けて確実に人へつなぐことでもあります。「全部AIに任せる」か「全部自分で出る」かの二択ではなく、用件ごとに分けるのが現実的です。
つまずきやすい点と避け方
- 案内情報が古いまま:料金や営業時間を変えたのにAIの設定を直し忘れると、誤った案内が続きます。変更したら同じ日に設定も更新する習慣をつけましょう。
- 伝言を見ない:AIが受けた伝言は、確認しなければ意味がありません。一日の終わりに見る時間を決めておきます。
- AIであることを隠す:最初にAIの受付であると伝えたほうが、相手も話し方を合わせやすく、不信感を持たれにくくなります。
- 業種に合わない使い方:飲食店なら予約と持ち帰り注文、職人の仕事なら現場からの見積もり依頼、と業種によって向いている使い方は違います。たとえば個人で仕事を回している方向けの考え方は自営業の方向けのページで紹介しています。
まとめ:まずは一週間の電話を書き出す
AIの電話受付代行は、出られない電話を減らし、決まった手順の用件をその場で片付けるのに向いています。一方で、判断や気持ちへの配慮が必要な電話は、人が出るべきです。
次の一歩としておすすめしたいのは、今週かかってきた電話を用件ごとに書き出すことです。どれをAIに任せ、どれを自分で受けるかが見えれば、サービスを選ぶ基準も自然と決まります。費用の考え方は料金ページで確認できます。
よくある質問
AIの電話受付代行は、相手に失礼な印象を与えませんか?
最初にAIの受付であることを伝え、用件をすばやく聞き取れれば、むしろ「つながらない」「待たされる」よりも好意的に受け取られることが多いです。ただし、年配の方や込み入った相談が多い業種では、人に代わる選択肢をすぐ示せるように設定しておくと安心です。
今使っている電話番号のまま使えますか?
多くの場合、今の番号から転送する形で使えます。出られないときや営業時間外だけ転送する、といった運用も可能です。利用できる転送方法は契約している通信会社や回線の種類によって異なるため、事前に確認してください。
人のオペレーターによる電話代行とどちらがよいですか?
予約や注文、定型の問い合わせが中心ならAIが向いています。夜間や同時着信にも強いのが利点です。一件ごとに丁寧な判断や交渉が必要な電話が多い場合は、人の代行や自分での対応を組み合わせるほうが合っています。
予約の二重登録は起きませんか?
予約カレンダーと連携し、AIが空き状況を確認してから確定する仕組みであれば、二重登録は起きにくくなります。ただし、紙の台帳や別のシステムでも予約を受けていると食い違いが出るため、予約の管理先は一つにまとめておくのが基本です。
Ringhumは、お店や事務所の電話に24時間対応するAI受付です。予約や注文の受付、伝言、WhatsAppでの応答を行い、人が対応すべき電話は伝言や転送で確実にお渡しします。