朝いちばんに見積もりの作成を始めた途端に電話が鳴ります。予約の確認、配送の問い合わせ、営業の電話。一本ずつは数分でも、そのたびに作業が止まり、気づけば昼を過ぎています。かといって電話に出ないでいると、新しいお客様の問い合わせを逃してしまいます。多くの中小企業がコールセンター業務の外注を考え始めるのは、ちょうどこんな日が続いたときです。
結論から言うと、外注は「電話を全部任せる」か「全部自分で出る」かの二択ではありません。よくある質問への回答、予約や注文の受付、伝言の取り次ぎといった定型的な部分は外に任せやすく、判断や交渉が必要な電話は社内に残すのが基本です。まずは自社にかかってくる電話の中身を分け、そのうえで外注先の種類と任せ方を選ぶ。この順番を守れば、大きな失敗はかなり避けられます。
この記事では、コールセンター業務を外注するときに押さえておきたい範囲の切り分け方、外注先の種類、費用の考え方、選び方のチェックリスト、そして人が対応すべき場面について、小さな事業者の目線で整理します。
コールセンター業務のうち、外注しやすいもの・しにくいもの
電話の中身は、業種が違っても大きく三つに分けられます。
外に任せやすい電話
- 営業時間、場所、駐車場、支払い方法など、答えが決まっている質問
- 予約の受付、変更、キャンセル
- 注文や配達の受付
- 担当者への伝言(名前、連絡先、用件の聞き取り)
- 営業時間外や休日、年末年始・お盆の時期の一次対応
これらは「何を聞かれたら何を答えるか」をあらかじめ決めておけるので、外部の担当者でもAIでも安定して対応できます。
条件付きで任せられる電話
- 見積もりの依頼(概算の考え方や必要な情報の聞き取りまで)
- 簡単なトラブルの受付(症状を聞き、折り返しを約束するまで)
受付までは外で行い、判断は社内で行う、という分担にすると無理がありません。
社内に残したほうがよい電話
- クレームや強い不満の訴え
- 金額や契約条件の交渉
- 医療・法律・安全に関わる判断
- 長年の取引先との込み入った相談
ここを外に出すと、対応の質だけでなく信頼関係そのものを損ねるおそれがあります。
外注先の主な種類と向き不向き
コールセンター業務の外注先には、おおまかに次のような形があります。
専門のコールセンター事業者 大量の電話を受ける体制が整っており、通販の受注窓口やキャンペーン時の問い合わせなど、件数が多く内容が定型的な業務に向いています。一方で、小規模な事業者には最低限の契約規模や初期の準備が負担になることがあります。
電話代行・秘書代行サービス 人のオペレーターが会社名で電話を受け、用件を聞き取って伝えてくれる形です。少人数の事業者でも使いやすく、「とにかく電話を取り逃さない」目的に合います。ただし、受けた電話の多くは伝言になり、予約の確定や質問への詳しい回答までは対応範囲外という契約も珍しくありません。
AI電話受付 音声AIが24時間電話に応答し、決められた範囲で質問に答えたり、予約や注文を受けたりします。夜間や休日、同時に何本もかかってくる時間帯に強いのが特徴です。反面、感情的なやり取りや前例のない相談には向かないため、人への引き継ぎの仕組みが欠かせません。
どれが正解というより、自社の電話の中身と量に合うかどうかで選びます。組み合わせて使う事業者もあります。
費用の考え方:月額だけで比べない
料金体系は、月額固定、件数や通話時間に応じた従量制、その組み合わせなど、サービスによってさまざまです。具体的な金額は地域や業種、契約内容で大きく変わるため、必ず複数の見積もりを取って比べてください。
比べるときに見落としがちなのが、「外注しない場合のコスト」です。
- 電話のたびに中断される作業時間
- 電話番のために事務所に誰かを置いておく人件費
- 出られなかった電話のうち、そのまま他社に流れた問い合わせ
- 折り返しの電話がつながらず、何度もかけ直す手間
これらは請求書には載りませんが、確実に発生しています。逆に外注側では、初期設定の手間、マニュアル作りの時間、契約期間の縛り、オプション料金なども確認が必要です。月額の安さだけで決めると、必要な対応が別料金だった、ということになりかねません。
ある工務店の一日:外注前と外注後
従業員数名の小さなリフォーム会社を例に考えてみます(架空の事例です)。
外注前のある火曜日
- 8:30 社長が現場へ向かう車中で電話。運転中なので出られない。
- 10:15 事務担当が見積書を作成中に、トイレ交換の問い合わせ。現場の写真を送ってもらう段取りをつけるだけで十数分かかる。
- 12:40 事務担当が昼休みで不在。着信が二件あったが、一件は番号非通知で折り返せない。
- 15:00 既存のお客様から工事日の変更連絡。社長の予定を確認できず「折り返します」。
- 19:30 閉店後、雨漏りの相談の着信。翌朝折り返すと「もう別の業者に頼みました」。
外注後の同じ曜日
- 8:30 運転中の着信は外注先が受け、名前・住所・用件を記録して社長にメッセージで届く。
- 10:15 トイレ交換の問い合わせには、写真の送り方と現地調査の流れを案内し、調査の候補日を受け付ける。事務担当は見積書を中断しない。
- 12:40 昼休みの電話も応答され、用件が一覧で残る。
- 15:00 工事日の変更は、あらかじめ共有した空き枠の範囲で受け付け、確定の連絡は社長から。
- 19:30 雨漏りの相談は緊急度を聞き取り、「急ぎ」として社長の携帯に通知。社長がその場で折り返す。
変わったのは、電話を取る人ではなく、「誰がどこまで対応するか」が決まったことです。社長と事務担当が判断すべき電話だけが手元に残り、それ以外は記録として整理されて届くようになりました。
外注先を選ぶためのチェックリスト
契約の前に、次の点を一つずつ確認してください。
- 自社の電話を一週間ほど記録したか。 時間帯、用件、件数をざっくりメモするだけで、任せる範囲がはっきりします。
- 対応時間はどこまでか。 平日昼だけか、夜間・土日祝・年末年始も含むか。
- どこまで回答・受付できるか。 伝言だけか、予約や注文の確定までできるか。
- 社内への引き継ぎ方法。 メール、チャット、通知など、すぐに気づける形で届くか。緊急時に担当者へつなげるか。
- 会社名や言葉づかいを指定できるか。 敬語の丁寧さ、方言への対応、名乗り方など。
- 個人情報の扱い。 通話記録や顧客情報の保存場所や管理方法が説明されているか。
- マニュアルの更新のしやすさ。 営業時間や価格が変わったとき、自分ですぐ直せるか。
- 試用や短期契約ができるか。 いきなり長期契約を結ばず、まず小さく試せるか。
- 料金に含まれる範囲。 件数の上限、超過分、オプションの扱い。
設定方法や運用の細かい疑問は、各サービスのヘルプやサポート窓口で事前に確認しておくと安心です。
よくある失敗と避け方
マニュアルを作らずに丸投げする。 外注先は自社のことを知りません。「よく聞かれる質問と答え」「受けてよい予約の条件」「急ぎの判断基準」を最低限まとめて渡しましょう。最初から完璧である必要はなく、運用しながら足していけば十分です。
引き継ぎの連絡が埋もれる。 伝言がメールの山に紛れて誰も見ていない、というのはよくある話です。急ぎかどうかで通知先を分けるなど、受け取る側の仕組みも整えます。
お客様に違和感を与える。 普段の電話と名乗り方や説明がまったく違うと、常連のお客様ほど戸惑います。会社の言葉づかいに合わせてもらいましょう。
効果を確かめない。 開始から一か月ほどたったら、取りこぼしが減ったか、社内の中断が減ったか、お客様から不満が出ていないかを振り返ります。
人が電話に出るべき場面
どれだけ外注や自動化を進めても、次のような電話は人が受けるべきです。
- お客様が怒っている、または強く困っているとき
- 事故、ケガ、水漏れなど、安全や損害に関わる緊急の連絡
- 契約内容や金額について、その場で判断が必要なとき
- 高齢のお客様などで、ゆっくり丁寧なやり取りが必要なとき
- 長い付き合いの取引先で、関係そのものが大事な相手
外注先には「この条件に当てはまったら、すぐ担当者につなぐ、または至急の通知を出す」というルールを渡しておきます。外注の目的は人の対応をなくすことではなく、人が対応すべき電話に集中できるようにすることです。
まとめ:まず一週間、電話の中身を書き出す
コールセンター業務の外注で失敗しないための第一歩は、サービス選びではなく、自社の電話を知ることです。今週一週間、かかってきた電話を「定型の質問」「予約・注文」「伝言」「判断が必要」に分けてメモしてみてください。定型の電話が多ければ外注やAI受付の効果は大きく、判断が必要な電話が多ければ、社内の体制づくりを優先したほうがよいとわかります。
そのうえで、チェックリストをもとに二、三のサービスを比べ、まずは夜間や昼休みなど限られた時間帯から試してみる。小さく始めて、うまくいった範囲を広げていくのが、中小企業にとって最も無理のない進め方です。
よくある質問
小さな会社でもコールセンター業務を外注できますか?
できます。大量の電話を前提とした専門事業者は契約規模が合わないこともありますが、電話代行やAI電話受付は少人数の事業者でも使いやすい形が多くあります。まずは営業時間外や昼休みなど、電話を取りこぼしやすい時間帯だけ任せる方法から検討すると、負担も少なく効果を確かめやすいでしょう。
外注するとお客様に失礼な印象を与えませんか?
名乗り方や言葉づかいを自社に合わせ、答えられる範囲をきちんと決めておけば、むしろ「いつ電話してもつながる」安心感につながります。注意したいのは、答えられない質問をあいまいに流すことです。わからないことは無理に答えず、担当者から折り返すと伝える運用にしておくと、印象を損ねにくくなります。
電話代行とAI電話受付はどう使い分ければよいですか?
人による丁寧な聞き取りを重視するなら電話代行、夜間や休日も含めて予約や注文、よくある質問まで受けたいならAI電話受付が向いています。どちらも、クレームや緊急の判断が必要な電話は社内の担当者に引き継ぐ前提で使うのが基本です。電話の内容と時間帯に応じて組み合わせる事業者もあります。
外注を始めるまでにどんな準備が必要ですか?
最低限、よく聞かれる質問と答え、営業時間や休業日、予約や注文を受ける条件、急ぎの連絡の判断基準と連絡先をまとめておきましょう。紙一枚程度でも構いません。始めてから足りない部分が見えてくるので、最初の数週間は届いた記録をこまめに確認し、内容を少しずつ更新していくのが現実的です。
Ringhumは、中小企業の代わりに24時間電話に応答し、よくある質問への回答、予約や注文の受付、伝言の記録、WhatsAppでのやり取りを行うAI電話受付です。クレームや緊急の判断など、人が対応すべき電話は担当者に引き継ぐ前提で使っていただくのが向いています。会社での使い方は企業向けのご案内、費用は料金ページ、設定の疑問はヘルプセンターでご確認いただけます。