現場に出ている時間、接客の最中、打ち合わせの途中。そんなときに限って事務所の電話が鳴ります。折り返そうと思っていた番号に夕方かけ直すと、もう別の会社に頼んだと言われる。小さな会社や個人事業主なら、一度は経験があるはずです。
電話取次代行サービスは、こうした「出られない電話」を外部の受付担当が会社名で受け、用件を聞き取ってメールやチャットで知らせてくれる仕組みです。急ぎの電話だけを担当者の携帯に転送する形もあります。事務員を一人雇うほどではないものの、電話を取りこぼしたくない会社に向いています。
この記事では、電話取次代行で何ができて何ができないのか、選ぶ前に確認すべき点、そして人が直接出たほうがいい電話の見分け方を、実際の一日の流れに沿って整理します。
電話取次代行サービスでできること、できないこと
基本的な流れはどのサービスでもほぼ同じです。
- 会社の番号にかかってきた電話を、代行先に転送する(不在時だけ、または常時)
- 受付担当が会社名で応答し、相手の名前・連絡先・用件を聞き取る
- 内容をメール、チャット、SMSなどで担当者に報告する
- 必要に応じて、指定された番号へ電話をつなぐ
得意なのは、「誰から、何の用件で、いつ折り返せばいいか」を確実に残すことです。留守番電話にはメッセージを残さずに切ってしまう人が多いですが、人の声で応答があれば、大半の相手は用件を話してくれます。
一方で、できないこと、苦手なことも知っておく必要があります。
- 専門的な質問への回答:見積もりの金額、工期、在庫、診療内容などは、基本的に「担当者から折り返します」になります。
- 予約や受注の確定:予約台帳や在庫と連携していないサービスでは、日時を仮で聞くところまでが一般的です。
- 会社ごとの細かい事情の判断:「この常連さんなら今日中に対応」といった判断は、事前に決めておかない限りできません。
つまり電話取次代行は「受けて、記録して、伝える」役割です。その先の対応は、あくまで自社で行う前提になります。
電話を取りこぼすと、何を失っているのか
出られなかった電話のすべてが大事な用件とは限りません。営業電話も混ざっています。ただ、小さな会社にとって痛いのは、次のような電話です。
- 初めての問い合わせ。相手は複数の会社を比べていることが多く、最初につながった会社に決めがちです。
- 急ぎの依頼。水漏れ、故障、当日の予約など、待てない用件は次の番号にかけ直されます。
- 既存のお客様からの連絡。つながらない状態が続くと、信頼が少しずつ削られます。
もう一つ見落としがちなのが、電話に出るために本業を中断するコストです。施術中に手を止める、現場で作業を中断する、来店客を待たせる。電話に出たことで、目の前のお客様への対応が雑になっては本末転倒です。どれくらいの影響があるかは業種や規模で大きく変わるため、まずは一週間ほど「出られなかった電話」と「電話で中断した作業」をメモしてみると、自社の実態が見えてきます。
一日の流れで見る:電話取次代行を使うリフォーム会社の例
社長と職人二人、事務は社長の家族が週三日手伝っている、という地域のリフォーム会社を想定してみます。
8時15分 社長は現場へ向かう車の中。事務所の電話は代行先へ転送する設定にしてあります。
9時40分 初めてのお客様から「浴室の床が傷んできたので見積もりに来てほしい」と電話。受付担当が名前、住所の地域、連絡先、希望の曜日を聞き取り、数分後に社長のスマートフォンへメッセージが届きます。
10時05分 社長は作業の区切りで内容を確認し、昼休みに折り返すことにします。
11時20分 取引先の業者から「午後の資材の搬入時間を変えたい」と連絡。事前に「取引先からの急ぎの連絡は転送」と決めてあったため、受付担当が社長の携帯につなぎ、その場で調整できました。
12時30分 社長が朝のお客様に折り返し、翌週の訪問日が決まります。
15時00分 営業電話が二件。「営業のご案内はお断りしています」と代行先で対応し、報告はまとめて一行だけ。
19時10分 既存のお客様から「先日直してもらった蛇口から、また少し水が出ている」と連絡。夜間も受付している契約なので用件が記録され、社長は翌朝一番に確認できました。
この例で大事なのは、代行サービスそのものよりも、「どの電話を転送し、どの電話をメッセージで済ませるか」を事前に決めてあることです。ここが曖昧だと、すべての電話が転送されて結局手が止まるか、逆に急ぎの電話が翌日まで放置されます。
電話取次代行サービスを選ぶ前の確認リスト
料金体系や対応範囲はサービスによって大きく異なります。月額の基本料に一定の件数が含まれ、超えた分が加算される形が多いものの、受付時間、土日祝や夜間の対応、転送の有無などで条件が変わります。契約前に、次の点を確認しておきましょう。
- 受付時間:平日の日中だけか、夜間・土日祝・年末年始も対応するか。自社の電話が多い時間帯と合っているか。
- 件数の数え方:営業電話や無言電話も一件と数えるか。上限を超えたときの扱いはどうか。
- 報告の方法と速さ:メール、チャット、SMSのどれで届くか。普段よく見る手段で受け取れるか。
- 転送の条件:急ぎの電話を携帯につなげるか。つながらなかったときはどうなるか。
- 応答の内容:会社名の名乗り方、よく聞かれる質問への答え方、伝えてはいけない情報をどこまで細かく指定できるか。
- 個人情報の扱い:聞き取った内容の保存期間や管理方法。業種によっては特に重要です。
- 変更のしやすさ:休業日や繁忙期に、応答内容をすぐに変えられるか。
このリストを持って二、三社に問い合わせると、違いがはっきり見えてきます。
よくある失敗と、その避け方
用件の聞き取り項目を決めていない。 「お名前と電話番号だけ」では、折り返す前に何も準備できません。業種ごとに、最低限聞いてほしい項目(希望日時、場所、症状や状況など)を三つから五つ決めておきます。
報告を見る習慣がない。 代行先が完璧に受けても、報告を夕方まで見なければ意味がありません。昼と夕方など、確認するタイミングを決めておきましょう。
「担当者から折り返します」と言ったまま折り返さない。 これは電話に出ないより印象が悪くなります。当日中に折り返せないなら、「明日の午前中にご連絡します」のように、答えられる約束だけをしてもらう設定にします。
会社の雰囲気と応答が合っていない。 丁寧すぎる、あるいは事務的すぎる応答は、常連のお客様に違和感を与えることがあります。名乗り方や言葉づかいは遠慮なく指定して構いません。
人が直接出るべき電話もある
電話取次代行もAIによる受付も、すべての電話に向いているわけではありません。次のような電話は、できるだけ担当者本人が出るか、すぐ本人につなぐ設定にしておくべきです。
- 苦情やトラブルの連絡:相手は感情的になっていることが多く、伝言を挟むとこじれやすくなります。
- 安全や健康に関わる緊急の連絡:ガス、水漏れ、事故、体調の急変など。緊急性が高い場合は、適切な窓口へ案内する手順も決めておきます。
- 金額や契約条件の交渉:その場で判断が必要なものは、取次では進みません。
- 長年の大口のお客様:本人が出ること自体が、関係を保つ価値になる場合があります。
「この番号、この用件なら必ず転送」というルールを最初に決めておけば、外部の受付を使いながらも、大事な電話を逃さずに済みます。
人による代行とAI受付、どう使い分けるか
最近は、人の受付担当ではなくAIが電話に応答するサービスも選べるようになりました。どちらが良いかは、電話の中身によって変わります。
人による電話取次代行が向いているのは、用件が毎回ばらばらで、相手の事情をくみ取りながら聞く必要がある電話です。一方、AI受付が向いているのは、予約の受付、営業時間や場所の案内、注文の受付、伝言の記録など、流れがある程度決まっている電話です。夜間や早朝、同時に何件もかかってくる時間帯でも待たせずに応答できる点も特徴です。
たとえば職人さんや工務店なら、現場で手が離せない業種向けの使い方のように、受付と予約の聞き取りはAIに任せ、緊急の連絡だけ携帯に回す、という組み合わせも考えられます。
まとめ:まずは一週間、電話を記録してみる
どのサービスを選ぶにしても、最初の一歩は自社の電話の実態を知ることです。
- 一週間、出られなかった電話と、電話で作業を中断した回数をメモする。
- かかってきた電話を「その場で本人が対応すべき」「伝言で足りる」「定型の案内で済む」に分ける。
- 伝言で足りる電話と定型の電話が多ければ、外部の受付に任せる価値がある。
- 聞き取り項目と、必ず転送する条件を書き出してから、二、三のサービスを比べる。
この準備をしておくだけで、どの代行先を選んでも立ち上がりがずっとスムーズになります。
よくある質問
電話取次代行と秘書代行は何が違いますか?
呼び方はサービスによってまちまちで、明確な線引きはありません。一般的には、電話を受けて用件を伝えることが中心のものを電話取次代行と呼び、スケジュール管理や来客対応の手配など、より幅広い事務を含むものを秘書代行と呼ぶことが多いです。契約前に、具体的に何をしてくれるのかを確認するのが確実です。
今の会社の電話番号のまま使えますか?
多くの場合、今の番号のまま、電話会社の転送サービスなどを使って代行先に転送する形で利用できます。常時転送にするか、一定時間出なかったときだけ転送するかも選べることが一般的です。設定方法は契約している電話回線によって異なるため、回線の契約内容とあわせて確認してください。
個人事業主でも使う意味はありますか?
あります。むしろ一人で仕事をしている人ほど、作業中や移動中に電話に出られない時間が長くなりがちです。用件だけでも確実に残っていれば、空いた時間にまとめて折り返せます。件数が少ない場合は、基本料金に含まれる件数や最低利用期間など、小規模向けの条件があるかを確認しましょう。
営業電話も代行先で断ってもらえますか?
多くのサービスで、営業電話をお断りする対応を指定できます。ただし、相手が営業目的を名乗らない場合もあるため、完全に見分けられるとは限りません。断った電話も一件として数えるかどうかは契約によって違うので、料金にかかわる点として事前に確認しておくと安心です。
Ringhumは、人の受付担当ではなくAIが24時間電話に応答し、予約や注文の受付、伝言の記録、WhatsAppでの返信までを行うサービスです。定型的な電話を任せ、苦情や緊急の電話は担当者につなぐ、という使い方に向いています。個別の判断が必要な電話が中心なら、人による代行のほうが合う場合もあります。料金は料金ページで、設定の進め方はヘルプセンターで確認できます。