朝から現場や接客で手が離せないのに、電話は鳴り続けます。出られなかった着信履歴を夕方にまとめて見て、折り返しても相手がつかまらない。そんな日が続くと、「電話の一次対応を自動にできないか」と考えるのは自然な流れです。そこで候補に挙がるのが、IVR(自動音声応答)です。
IVRを電話に導入すると、「ご予約は1番、営業時間のご案内は2番」といった音声ガイダンスで、かけてきた方を用件ごとに振り分けられます。うまく設計すれば、よくある問い合わせを自動で済ませ、担当者は大事な電話に集中できます。一方で、メニューが深すぎたり案内が長すぎたりすると、途中で切られてしまい、かえって取りこぼしが増えることもあります。
この記事では、小さな会社や店舗の目線で、IVRの導入で何が変わるのか、導入前に決めておくべきこと、避けたい失敗、そして人が電話に出るべき場面を整理します。
IVRとは何か、電話の導入で何が変わるのか
IVRは、電話をかけてきた方に録音済みの音声で案内を流し、プッシュボタンの入力によって次の案内や担当者へ振り分ける仕組みです。代表的な使い方は次のようなものです。
- 用件の振り分け:予約、注文、修理依頼、請求の問い合わせなどを番号で分け、適切な担当者や部署につなぐ
- 定型情報の自動案内:営業時間、定休日、アクセス、駐車場の有無など、毎日何度も聞かれることを音声で伝える
- 時間外の対応:営業時間外は案内を流して留守番電話につなぐ、緊急時の連絡先を伝える
変わるのは主に「誰がどの電話に出るか」の交通整理です。大きなコールセンターでは担当部署が多いため効果が出やすい一方、数人で回している会社では、振り分け先が実質ひとりしかいないことも珍しくありません。その場合、IVRを入れても「結局同じ人の携帯が鳴る」だけになりがちです。導入の目的を「振り分け」に置くのか、「用件を受け付けて記録すること」に置くのかで、選ぶべき仕組みが変わります。
よくある失敗:お客様を迷わせるIVR
IVRに対する不満として多くの人が思い浮かべるのは、「なかなか人につながらない」体験です。導入する側が気をつけたいのは、次のような点です。
メニューが多すぎる、階層が深すぎる
「1番を押すと、さらに4つの選択肢」という作りは、聞いている側にとって負担です。選択肢を覚えきれず、最初から聞き直すことになります。小さな会社なら、最初の選択肢は少なく絞り、階層もできるだけ浅くするのが基本です。
冒頭の案内が長い
会社の紹介、お知らせ、録音の告知と続くと、肝心の選択肢にたどり着く前に切られてしまいます。最初の数秒で「どこにかけたか」と「何ができるか」が伝わる構成にしましょう。
「その他」の逃げ道がない
用件がどの番号にも当てはまらない方は必ずいます。「その他のご用件」や「担当者と話したい方」の選択肢がないと、適当な番号を押されて結局たらい回しになります。
年配の方や携帯からの発信への配慮不足
スマートフォンで通話中に画面のキーパッドを出すのは、慣れていない方には意外と手間です。地域密着の商売で年配のお客様が多い場合、プッシュ操作そのものが壁になることがあります。
ある工務店の一日で考える
具体的に、社長と職人、事務担当の三人で営む町の工務店を想像してみます。リフォームや水回りの修理を請け負い、電話はほぼすべて事務担当の携帯と事務所の固定電話に来ます。
IVR導入前のある日
- 8:10 社長と職人は現場へ。事務担当は銀行に寄ってから出社予定。その間に「トイレの水が止まらない」という電話が入るが、誰も出られない。
- 9:30 事務担当が着信履歴に気づいて折り返すが、相手は別の業者に頼んだあとだった。
- 11:00 「見積もりの日程を変えたい」「先週の請求書の件で」と立て続けに電話。どちらも急ぎではないが、そのたびに書類作業が中断する。
- 18:30 事務所を閉めたあとに、新築の相談の電話。翌朝まで気づかない。
IVRを入れた場合
「修理のご依頼は1番、見積もりや工事日程は2番、その他は3番」と案内する設定にすると、1番の修理依頼だけは社長の携帯に転送し、2番と3番は留守番電話で用件を残してもらう、といった運用ができます。朝の水漏れの電話は現場にいる社長に直接つながり、事務担当は午前中の書類作業を中断せずに済みます。
ただし、課題も残ります。社長が作業中で手が離せなければ、転送された電話にもやはり出られません。留守番電話に残されたメッセージは、名前や番号が聞き取りにくかったり、用件が要領を得なかったりすることもあります。夜の新築相談も、留守番電話に吹き込んでくれる方ばかりではありません。
この例が示すのは、IVRが得意なのは「振り分け」であって、「受け付けて、聞き取って、記録すること」までは担ってくれないという点です。人手が限られる会社ほど、この差が効いてきます。
IVR電話を導入する前のチェックリスト
導入を決める前に、次の項目を順番に確認しておくと、失敗をかなり減らせます。
- 一週間分の電話を書き出す:どんな用件が、どの時間帯に、どれくらいの頻度で来ているか。完璧でなくても、メモを取るだけで傾向が見えます。
- 用件を三つ程度にまとめる:書き出した用件をグループに分け、最初のメニューに出す選択肢を絞り込みます。
- それぞれの振り分け先を決める:誰の電話につなぐのか、その人が出られないときはどうするのかまで決めておきます。
- 急ぎの電話の扱いを決める:修理、体調、予約当日の変更など、すぐ対応が必要な電話をどう見分け、誰に知らせるかを決めます。
- 営業時間外の流れを決める:案内だけで終えるのか、メッセージを受け付けるのか、緊急連絡先を伝えるのか。
- 今の電話番号のまま使えるか確認する:契約している回線やサービスによって、番号の引き継ぎや転送の可否、設定方法が異なります。
- 費用の内訳を確認する:初期費用、月額、通話料、転送時の料金などは、サービスや回線の種類によってまったく違います。見積もりの段階で必ず確認しましょう。
- 自分でかけて試す:導入後、実際にお客様の立場で何度か電話をかけ、迷う箇所や長すぎる案内がないか確かめます。
番号で選ぶIVRと、会話で受け付けるAI受付の違い
最近は、プッシュ操作の代わりに、かけてきた方が普通に話すだけで用件を聞き取るAIの電話受付も選択肢になっています。どちらが合うかは、業種と電話の中身次第です。
従来型のIVRが向いている場合
- 部署や担当者が複数あり、正しい人につなぐことが最大の目的
- 用件の種類がはっきり分かれていて、お客様も迷わず選べる
- 電話に出られる人が常に誰かいる
会話型のAI受付が向いている場合
- 少人数で、そもそも電話に出られる人がいない時間が多い
- 予約や注文、問い合わせの内容を聞き取って記録してほしい
- 夜間や休日の電話もきちんと受け付けたい
- プッシュ操作が苦手なお客様が多い
たとえば飲食店なら、営業中の厨房で電話に出られない時間帯に予約や問い合わせを受け付けられるかどうかが鍵になります。業種ごとの使い方は、飲食店向けのページでも紹介しています。
どちらを選ぶにしても、「お客様が最短で用件を済ませられるか」を基準に考えると判断を誤りにくくなります。
人が電話に出るべき場面
IVRでもAI受付でも、自動化に向かない電話はあります。次のような電話は、人が対応する流れを必ず用意しておきましょう。
- 苦情やトラブルの電話:感情が高ぶっている方に自動音声を返すと、状況が悪化しがちです。
- 緊急性の高い電話:水漏れやガス、体調に関わる相談など、すぐ判断が必要なものです。
- 込み入った相談や高額な契約の話:信頼関係が決め手になる場面では、最初から人が話した方がうまく進みます。
- 長年の常連客や大事な取引先:番号でわかる相手は直接つながるように設定できるかを確認しておくと安心です。
大切なのは、自動化した部分から人へ引き継ぐ道筋がはっきりしていることです。「担当者に代わってほしい」という声にすぐ応えられる設計にしておけば、お客様の不満はかなり防げます。
まとめ:まずは一週間の電話を書き出すことから
IVRの電話への導入は、用件が明確に分かれていて、振り分け先の人がいる会社には効果的です。一方、少人数で電話に出られない時間が長い会社では、振り分けよりも「受け付けて記録する」仕組みの方が困りごとを直接解決してくれることがあります。
次の一歩としておすすめするのは、まず一週間、かかってきた電話の時間帯と用件をメモすることです。それだけで、必要なのが振り分けなのか、受付なのか、時間外対応なのかが見えてきます。そのうえで上のチェックリストを使い、複数の仕組みを同じ基準で比べてみてください。
よくある質問
小さな会社でもIVRを導入する意味はありますか?
用件が複数に分かれていて、それぞれ別の人が対応しているなら意味があります。ただし、電話に出られる人がひとりしかいない場合、振り分けても結局同じ人に電話が集まるだけになりがちです。その場合は、用件を聞き取って記録する仕組みや、時間外の受付を優先して考えた方が効果を感じやすいでしょう。
今使っている電話番号のままIVRを導入できますか?
多くの場合は転送設定などで対応できますが、契約している回線の種類や提供会社、選ぶサービスによって可否や方法が異なります。固定電話か携帯か、番号の種類は何かによっても変わるため、申し込み前に必ず確認してください。番号を変えずに済むかどうかは、お客様への影響が大きい点です。
IVRを入れるとお客様に嫌がられませんか?
メニューが多い、案内が長い、人につながらない、といった作りだと不満につながります。選択肢を少なく絞り、冒頭の案内を短くし、「その他」や担当者につながる道を用意すれば、印象は大きく変わります。導入後は自分で何度か電話をかけ、お客様の立場で迷う箇所がないか確かめるのがおすすめです。
IVRとAIの電話受付はどう選べばいいですか?
正しい担当者につなぐことが目的ならIVR、電話に出られない時間の予約や問い合わせを受け付けて記録したいならAI受付が向いています。プッシュ操作が苦手なお客様が多い場合も、話すだけで済む方が負担は少なくなります。一週間の電話の中身を書き出し、どちらの困りごとが大きいかで判断しましょう。
Ringhumは、番号で振り分けるIVRではなく、かけてきた方と自然な会話で用件を聞き取るAI電話受付です。24時間電話に出て、予約や注文、伝言を受け付け、WhatsAppでの返信にも対応します。苦情や緊急の相談など人が出るべき電話は担当者に引き継ぐ前提で使うのが向いています。設定の流れはヘルプセンターで、費用は料金ページでご確認いただけます。