朝の仕込み中、現場への移動中、接客の最中にも電話は鳴ります。出られなかった着信履歴を夕方にまとめて見て、折り返すうちに一日が終わってしまう。そんな状況から「自動音声で振り分けられたら」と考え、IVR(自動音声応答)の導入費用を調べ始める方は少なくありません。
先に結論をお伝えします。IVRの導入費用は「初期費用」「月額費用」「運用にかかる手間」の三つで決まり、見積書に載るのは最初の二つだけです。金額は提供形態、回線数、番号の種類、メニューの複雑さで大きく変わるので、相場の数字を探すより、内訳ごとに自社に必要かどうかを判断するほうが確実です。
この記事では、費用が発生するポイントを一つずつ整理し、見積もり前に確認しておきたいこと、IVRが向いている会社と向いていない会社、人が電話を取るべき場面までまとめました。
IVRの導入費用は何で決まるのか
提供形態:クラウド型かオンプレミス型か
費用の構造をいちばん大きく左右するのは提供形態です。
- クラウド型:事業者のシステムをインターネット経由で使います。専用機器が不要なことが多く、初期費用は比較的抑えやすい一方、月額料金がずっと続きます。
- オンプレミス型:社内に機器(PBXなど)を置いて運用します。機器の購入や設置工事で初期費用が膨らみやすく、保守契約や将来の入れ替え費用も考えておく必要があります。
従業員が数人から数十人規模の会社なら、クラウド型から検討するのが一般的です。
初期費用に含まれやすいもの
- アカウント開設・初期設定の費用
- 電話番号の取得や番号ポータビリティ(今の番号を引き継ぐ手続き)の費用
- 音声メニュー(シナリオ)の設計・設定代行
- ガイダンス音声の作成(合成音声か、ナレーターによる録音か)
- 既存の電話機や顧客管理システムとの連携費用
- オンプレミス型の場合は機器代と工事費
月額費用に含まれやすいもの
- 基本料金(アカウント単位、または回線・チャネル単位)
- 同時に受けられる通話数に応じた料金
- 通話料(着信課金の番号を使う場合は、かけてきたお客様ではなく自社が負担します)
- 転送時の通話料
- 録音、SMS送信、通話データの分析などのオプション料金
事業者によって「どこまでが基本料金に含まれるか」がかなり違います。同じ「月額」でも中身が揃っていないことが多いので、比べるときは項目ごとに並べ直すのがおすすめです。
見積書に載らないIVRのコスト
導入後に効いてくるのは、むしろこちらです。
メニュー変更の手間と費用。 営業時間の変更、年末年始やお盆の休業、新サービスの追加のたびにガイダンスを差し替える必要があります。自分で管理画面から変更できるのか、毎回依頼して費用が発生するのかで、年間の負担は大きく変わります。
結局、人が対応する時間。 IVRは電話を「振り分ける」仕組みで、用件そのものを片付けるものではありません。「予約は1番」と案内しても、その先で誰かが出られなければ、留守電か折り返しになります。
途中で切られる電話。 番号選択が長かったり、選択肢に当てはまる項目がなかったりすると、お客様は途中で電話を切ってしまいます。その電話が新規の問い合わせだった場合の損失は、見積書のどこにも載りません。
担当者の学習コスト。 設定画面の操作を覚える人が一人しかいないと、その人が休んだときに誰も変更できなくなります。
ある工務店の一日で考える
社長と事務スタッフ一人、職人数名でリフォームを請け負う地域の工務店を例にします。
- 8:00 社長は現場へ。事務所の電話は事務スタッフが受けています。
- 9:30 事務スタッフが銀行へ外出。その間に、水漏れで困っている既存のお客様から電話が入り、留守電になります。
- 11:00 資材業者から納期の確認。メニューがあれば「業者様は2番」で担当者の携帯へ転送できます。
- 13:00 キッチンリフォームを検討している新規のお客様から電話。「3番:見積もりのご相談」を選んでもらっても、社長は現場、事務スタッフは別の電話に対応中で、結局は折り返し対応になります。
- 19:00 営業時間外。IVRは「本日の受付は終了しました」と流すだけです。
この工務店では、IVRで業者からの電話を振り分ける効果はあります。ところが、本当に取りこぼしたくない新規相談と緊急の修理依頼は、振り分けた先で人が出られなければ解決しません。費用を考えるときは「何本の電話を振り分けたいか」より「誰も出られないときに、どの電話をどう終わらせたいか」から考えると、必要な仕組みが見えてきます。
職人や個人事業の方の電話の悩みは、職人・工事業向けのページでも具体的に紹介しています。
IVR導入費用を見積もる前のチェックリスト
見積もり依頼の前に、次の項目を社内で書き出しておくと、比較がぐっと楽になります。
- 電話の種類を分ける:予約、注文、問い合わせ、業者、営業電話など、どんな電話がどれくらい来ているか、ざっくり把握する。
- 電話が集中する時間帯を確認する:同時に何本かかってくるかで、必要な回線数が決まります。
- 番号をどうするか決める:今の番号を使い続けるのか、新しく番号を取るのか。番号の引き継ぎが可能かも確認します。
- 転送先を決める:どの用件を誰の電話に回すのか。誰も出られなかったときの流れも決めておきます。
- 営業時間外の対応を決める:案内を流すだけか、伝言を受けるか、別の連絡手段に誘導するか。
- 変更の頻度を見積もる:メニューや案内を年に何回くらい変えそうか。自分で変更できる仕組みが必要かどうかを判断します。
- 見積もりを項目ごとに比べる:初期費用、基本料金、回線料金、通話料、オプションを横に並べ、どこまでが含まれているかを確認する。
- 最低契約期間と解約条件を確認する:合わなかったときにやめられるかどうかも、費用の一部です。
IVRで避けたい失敗
- メニューを深くしすぎる:「1番を押したあとさらに3番」という階層が続くと、お客様は迷います。選択肢は少なく、浅くするのが基本です。
- 「その他」の逃げ道がない:どれにも当てはまらない用件の人が、行き場を失います。
- 安さだけで選ぶ:初期費用がほぼかからなくても、変更のたびに費用が発生したり、通話料が割高だったりすると、結果的に高くつくことがあります。
- 導入して終わりにする:どこで電話が切られているか、どの番号がよく押されるかを定期的に見直さないと、メニューが実態とずれていきます。
IVRとAI電話受付、どちらが合うか
IVRは「押された番号で振り分ける」仕組みです。部署が複数ある会社や、用件がはっきり分かれているコールセンターには今もよく合います。
一方、少人数のお店や事務所では、振り分ける先の人が手一杯ということがよくあります。そういう場合に検討されるのが、お客様と会話して予約や伝言をその場で受け取るAI電話受付です。番号を押してもらう必要がなく、用件を聞いて記録し、必要なら担当者へ知らせる、という流れになります。
費用の比べ方も少し変わります。IVRは「振り分けのための費用」、AI電話受付は「受付業務そのものを任せる費用」と考えると、何と比べるべきかがはっきりします。複数部署がある会社の電話の整理については、企業向けのページも参考になります。
人が電話を取るべき場面
IVRでもAI電話受付でも、機械に任せないほうがよい電話があります。
- クレームや強い不満:まず人の声で受け止めることが大切です。
- 緊急性の高い連絡:水漏れ、事故、体調の急変など。すぐに担当者へつながる道を必ず用意しておきます。
- 金額や条件の交渉:見積もりの細かい調整や契約内容の相談。
- 長年のお得意様:いつもの担当者と話したい方には、そのほうが安心です。
仕組みを入れるときは「全部を自動化する」のではなく、「人が出るべき電話に、人が確実に出られるようにする」ことを目標にすると失敗しにくくなります。
まとめ:まずは自社の電話を一週間書き出す
IVRの導入費用は、初期費用と月額費用だけでなく、メニュー変更の手間、人が対応する時間、途中で切られる電話まで含めて考える必要があります。いちばん確実な第一歩は、見積もりを取る前に一週間ほど、かかってきた電話の時間帯と用件、出られたかどうかを簡単に記録してみることです。
その記録があれば、必要なのが「振り分け」なのか「代わりに受けてくれる仕組み」なのかがはっきりし、見積もりの比較も具体的になります。
よくある質問
IVRの導入費用の相場はどのくらいですか?
提供形態、回線数、番号の種類、メニューの複雑さ、オプションの有無によって大きく変わるため、一律の相場を示すのは難しいのが実情です。目安を知りたい場合は、同じ条件で複数の事業者から見積もりを取り、初期費用、基本料金、通話料、オプションを項目ごとに並べて比べるのが確実です。
小さな店舗でもIVRを導入する意味はありますか?
業者からの電話と予約の電話を分けたいなど、振り分けの目的がはっきりしていれば意味があります。ただし、振り分けた先で出られる人がいないと、結局は折り返しになります。少人数のお店では、用件を受け取ってくれる仕組みのほうが合うこともあるので、両方を比べてみてください。
今使っている電話番号のまま導入できますか?
多くの場合、番号の引き継ぎや転送設定で今の番号を使い続けられます。ただし、番号の種類や契約している回線によっては引き継げないこともあります。名刺や看板、ホームページに載せている番号を変えずに済むかどうかは、見積もりの段階で必ず確認しておきましょう。
導入後にメニューを変えるたびに費用はかかりますか?
事業者によって異なります。管理画面から自分で自由に変更できる場合もあれば、変更のたびに依頼が必要で費用が発生する場合もあります。営業時間や休業日の案内は年に何度も変わるものなので、契約前に変更の方法と費用を確認しておくと、後から想定外の出費が出にくくなります。
Ringhumについて:Ringhumは、番号を押してもらう代わりに会話で電話を受けるAI電話受付です。24時間電話に出て、予約や注文、伝言を受け付け、WhatsAppでのやり取りにも対応します。クレームや緊急の連絡など、人が出るべき電話は担当者へつなぐ設定にできます。料金は料金ページで、設定方法はヘルプセンターでご確認いただけます。