夕方の仕込み中に電話が鳴り、出てみると英語で「WhatsAppで予約を送ってもいいですか?」と聞かれる。訪日客や海外の取引先が増えると、こうした場面は珍しくありません。国によっては、電話より先にWhatsAppでメッセージを送るのが当たり前だからです。
WhatsAppビジネスアカウントの作り方そのものは難しくありません。無料のビジネス用アプリを入れて電話番号を認証し、店名や営業時間を登録すれば、その日のうちに使い始められます。ただ、どの番号を使うか、誰が返信するか、営業時間外にどう応えるかを先に決めておかないと、メッセージが溜まるだけの窓口になってしまいます。
この記事では、ビジネスアカウントを作る手順と、作ったあとに困らないための決めごと、電話や人の対応との使い分けを順番にまとめます。
まず確認したいこと:お店にWhatsAppは必要か
日本国内のお客様が中心なら、WhatsAppでの問い合わせはそれほど多くないかもしれません。国内では別のメッセージアプリが広く使われているからです。一方で、次のようなお店や会社では窓口として役に立ちます。
- 海外からの宿泊客が多い旅館やホテル
- 観光地の飲食店、体験教室、ツアー事業者
- 海外の取引先や外国籍のお客様とやり取りする会社
- 外国人居住者の多い地域の美容室、クリニック、修理業
迷ったら、過去数か月の問い合わせを振り返ってください。「WhatsAppはありますか」と聞かれたことが何度かあれば、始める価値はあります。
ビジネスアカウントを作る前に準備するもの
WhatsAppには個人向けアプリとビジネス向けアプリがあります。お店で使うなら、プロフィールや自動返信の機能があるビジネス向けアプリを選びます。始める前に、次の三つを用意しておきましょう。
1. 使う電話番号を決める
いちばん大事なのが番号です。一つの番号は、同じ時期に一つのWhatsAppアカウントでしか使えません。店主の個人の携帯番号で作ると、プライベートのやり取りとお店の連絡が混ざり、担当を替えるときにも困ります。
お店専用の携帯番号があれば、それが扱いやすい選択肢です。固定電話の番号でも作れる場合があります。認証コードをSMSで受け取れない番号は、音声通話でコードを受け取る方法を選びます。認証のときに受話器を取れる人が店にいる時間帯に作業しましょう。
2. プロフィールに載せる情報
店名、業種、短い紹介文、住所、営業時間、メールアドレス、ウェブサイトなどを登録できます。海外のお客様が読むことを考えて、紹介文は日本語と英語を併記しておくと親切です。
3. ロゴや店舗の写真
プロフィール画像は、お客様が「正しいお店に送っているか」を確かめる目印になります。看板やロゴなど、外から見て分かりやすいものを選びましょう。
WhatsAppビジネスアカウントの作り方:5つの手順
細かな画面表示はアプリの更新で変わることがありますが、大まかな流れは次のとおりです。
- ビジネス用アプリをインストールする スマートフォンのアプリストアで、WhatsAppのビジネス向けアプリを探して入れます。個人向けアプリとは別のアプリです。
- 電話番号を入力して認証する 国番号に日本(+81)を選び、番号の先頭の0を除いて入力します。例えば090から始まる番号なら「90」から入力します。SMSか音声通話で届く認証コードを入力すれば完了です。
- 店名とプロフィールを登録する 表示名には看板と同じ店名を使います。業種、住所、営業時間、紹介文もここで入れておきます。
- あいさつメッセージと不在メッセージを設定する 初めて連絡してきた人への「あいさつメッセージ」と、営業時間外に自動で返す「不在メッセージ」を作ります。詳しくは次の章で説明します。
- 連絡先をお客様に知らせる アプリで作れる短いリンクやQRコードを、予約確認メール、ウェブサイト、店頭のポップに載せます。
すでに個人向けアプリで使っている番号をお店用にしたい場合は、ビジネス向けアプリに切り替えることもできます。その場合は、事前にチャットのバックアップを取っておくと安心です。
作ったあとに決めておく運用ルール
アカウントは作って終わりではありません。返事が来ない窓口は、ないよりも印象が悪くなります。
返信の担当と時間を決める
「誰が、何時から何時までに返信するか」を決めます。小さなお店なら、昼の休憩時間と閉店後の二回まとめて確認する、という形でも十分回ります。
不在メッセージに「次にいつ返事をするか」を書く
「ただいま営業時間外です」だけでは、お客様は待つべきか、別の手段を探すべきか判断できません。例えば次のように書きます。
お問い合わせありがとうございます。営業時間は11時〜21時(火曜定休)です。営業時間内に順番にご返信します。当日のご予約やお急ぎの場合はお電話ください。
英語版も並べておくと、海外のお客様にも伝わります。
よく使う返事は「クイック返信」に登録する
道順、駐車場の有無、キャンセルの扱い、アレルギー対応の可否など、毎回同じ説明をしている内容は、短いキーワードで呼び出せる定型文にしておきます。返信の速さがまったく変わります。
ある一日の例:海外客の多い小さな旅館
架空の旅館の一日で、使い方をイメージしてみます。
- 7時30分 女将がスマートフォンを確認すると、深夜にヨーロッパのお客様から「チェックイン前に荷物を預けられますか」と届いていた。不在メッセージが自動で返っていたので、相手は待ってくれている。登録済みの定型文で「15時より前でもお預かりします」と返信。
- 10時 別のお客様から、夕食に菜食の対応ができるかという相談。板場に確認が必要なため「確認して昼までにご連絡します」とだけ返し、ラベル機能で「要確認」を付けておく。
- 12時 板場の回答をもとに返信。予約内容の変更は台帳にも書き込む。
- 18時 夕食の準備で手が離せない時間に、空室を尋ねる電話が二本鳴る。どちらにも出られず、一本は折り返し先も分からないまま切れてしまった。
この例のように、メッセージは「あとでまとめて返す」ことができますが、電話はその場で出られなければ機会を逃します。WhatsAppを整えると同時に、忙しい時間帯の電話をどうするかも考えておく必要があります。
避けたい失敗と、人が対応すべき場面
よくある失敗
- 店主の個人番号で作り、家族の連絡とお客様の連絡が混ざる
- 不在メッセージを設定せず、夜中の問い合わせに既読も返事もないまま朝を迎える
- 予約をWhatsAppで受けたのに台帳に書き忘れ、ダブルブッキングになる
- 一度に多くの相手へ一方的な宣伝を送る。迷惑だと感じられやすく、アカウントが制限される原因にもなります
人が対応すべき場面
自動返信や定型文が向いているのは、営業時間、場所、空き状況の確認といった決まった質問です。次のような場面は、スタッフが自分の言葉で、必要なら電話に切り替えて対応してください。
- 体調、アレルギー、安全に関わる相談
- 苦情やトラブル、返金の話
- 条件の交渉が必要な団体予約や法人の依頼
- 相手が困っている、急いでいると文面から分かるとき
文字だけのやり取りでは行き違いが起きやすい内容ほど、早めに声で話すほうが結果的に早く片づきます。
まとめ:今日やること
WhatsAppのビジネスアカウントは、番号さえ決まれば短い時間で作れます。次の順番で進めてみてください。
- お店専用の番号を決める(個人番号は避ける)
- ビジネス向けアプリを入れて番号を認証する
- 店名、営業時間、日英の紹介文、写真を登録する
- 不在メッセージに「次に返信する時間」と「急ぎの連絡先」を書く
- よく聞かれる質問を三つ選んでクイック返信に登録する
- 返信担当と確認する時間帯を決める
- リンクやQRコードを予約確認メールと店頭に載せる
そのうえで、メッセージでは拾えない「忙しい時間の電話」をどうするかも、あわせて見直しておくと安心です。
よくある質問
固定電話の番号でもWhatsAppビジネスアカウントは作れますか?
作れる場合があります。固定電話はSMSを受け取れないため、認証の際に音声通話でコードを受け取る方法を選びます。電話が鳴ったらすぐ出られるよう、店にいる時間に作業してください。ただし、外出先で返信したい場合はスマートフォンでアプリを使うことになるので、返信する人がどの端末で確認するかも先に決めておきましょう。
個人で使っているWhatsAppをお店用に切り替えられますか?
同じ番号のままビジネス向けアプリに移行できます。事前にバックアップを取っておけば、チャット履歴も引き継げます。ただし、同じ番号を個人向けとビジネス向けの両方で同時に使うことはできません。プライベートの連絡と混ざるのが気になる場合は、最初からお店専用の番号で作るほうが後々楽です。
利用料金はかかりますか?
ビジネス向けアプリは無料でダウンロードして使えます。通信料は契約しているプランによって異なります。大量のメッセージを送る企業向けの仕組みは別にあり、こちらは条件や費用の体系が異なります。小さなお店がお客様と一対一でやり取りする用途であれば、まずは無料のアプリから始めれば十分です。
返信が遅れるとお客様に悪い印象を与えませんか?
返事の時期が分からないことが不安につながります。不在メッセージに営業時間と「何時ごろまでに返信するか」を書いておけば、多くのお客様は待ってくれます。それでも当日の予約や急ぎの相談は、メッセージより電話のほうが確実です。不在メッセージに電話番号を添えておきましょう。
Ringhumにできること Ringhumは、お店の電話に24時間AIで応答する受付サービスです。仕込みや接客で手が離せない時間の電話に出て、予約や伝言を受け、WhatsAppでのやり取りにも対応します。苦情や込み入った相談は、無理に自動で片づけずスタッフへ引き継ぐ前提で使うものです。業種ごとの使い方は飲食店向けや宿泊施設向けのページを、設定の詳細はヘルプセンターをご覧ください。