朝の開店準備をしている最中に電話が鳴り、手を止めて出ると「今日は何時まで営業ですか」という質問でした。切った直後にまた鳴って、今度は予約の変更です。接客中に鳴った電話には出られず、気づいたら折り返し待ちが三件たまっている。小さなお店や会社では、こうした日が珍しくありません。
そこで候補に挙がるのがIVR(自動音声応答)です。「〇〇の方は1を、△△の方は2を」と案内して、電話を用件ごとに振り分けたり、よくある質問には自動で答えたりする仕組みです。この記事では、小規模な事業者がIVRを導入するときの進め方を、準備から運用まで順番に説明します。
先にお伝えしておくと、IVR導入で一番大切なのは機械選びではありません。自分の店にどんな電話がかかってきているかを知ることです。ここを飛ばすと、立派なメニューを作ってもお客様が迷うだけになってしまいます。
IVRで解決できること、できないこと
IVRが得意なのは、用件がある程度決まっている電話です。
- 営業時間、定休日、場所、駐車場の案内
- 「予約」「問い合わせ」「採用」などの部署や担当への振り分け
- 営業時間外の案内と、伝言の受け付け
一方で、押しボタン式のIVRは、お客様が自分の用件をメニューに当てはめられないと機能しません。「どれにも当てはまらない」「選択肢が多くて覚えられない」と感じた人は、途中で電話を切ってしまうこともあります。高齢のお客様が多い業種や、毎回用件が違う相談業務では、とくに注意が必要です。
つまりIVRは、電話対応の負担を減らす道具であると同時に、設計を誤るとお客様を遠ざける道具にもなります。この前提で進めましょう。
導入前の準備:一週間分の電話を書き出す
設定作業に入る前に、まず一週間ほど、かかってきた電話を簡単にメモしてください。項目は次のくらいで十分です。
- かかってきた時間帯
- 用件(予約、変更、質問、営業電話など)
- その場で答えられたか、折り返しが必要だったか
- 出られなかった電話の有無
数日続けると傾向が見えてきます。「営業時間の質問が意外と多い」「昼の12時台に集中している」「閉店後にも電話が来ている」といった具合です。この記録が、そのままIVRのメニュー設計の材料になります。
IVR導入方法の全体像:7つのステップ
ここからが実際の進め方です。
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目的を一つに絞る 「出られない電話を減らす」「よくある質問への対応時間を減らす」「担当者へ正しく回す」など、何を一番改善したいかを決めます。目的が複数あると、メニューが膨らみがちです。
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用件を三つか四つにまとめる 準備で書き出した用件を、多い順に並べてまとめます。選択肢は少ないほど迷われません。階層を深くするのも避け、二段階までに収めるのが無難です。
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仕組みを選ぶ 主な選択肢は、電話回線のサービスに付いている自動応答、クラウド型の電話システム(クラウドPBX)に付いているIVR機能、そして会話で用件を聞き取るAI電話受付の三つです。どれを選ぶかによって、今の電話番号をそのまま使えるかどうか、工事が必要かどうかが変わります。契約内容によって異なるので、事前に必ず確認してください。
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ガイダンスの原稿を書く 最初のあいさつは短くします。店名を名乗り、すぐに選択肢へ進むのが基本です。「お電話ありがとうございます。〇〇です。ご予約は1を、それ以外のお問い合わせは2を押してください」くらいの長さを目安にしましょう。
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「どれにも当てはまらない人」の出口を作る オペレーターへの転送、伝言の録音、折り返しの受け付けなど、メニューから外れた人が行き着く先を必ず用意します。
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自分たちでテストする スタッフや家族に、実際にお客様のつもりで電話してもらいます。スマートフォンから、騒がしい場所から、ゆっくり話す人の立場からも試してください。
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公開後に見直す 最初の数週間は、どの番号が押されたか、途中で切られた電話がないかを確認し、必要に応じて原稿や順番を直します。一度作って終わりにしないことが、IVRを長く使えるものにするコツです。
押しボタン式と会話型の違い
押しボタン式は、用件が決まっていて、お客様が操作に慣れている場合に向いています。会話型のAI電話受付は、お客様が普通に話した内容から用件を聞き取るため、メニューを覚えてもらう必要がありません。予約の受け付けや伝言など「聞いて、記録して、伝える」電話が多い事業者なら、会話型のほうが合うこともあります。RinghumのようなAI電話受付は、こちらのタイプです。
ある一日で考える:街の整骨院の場合
院長と受付スタッフの二人で運営している整骨院を例に考えてみます。
8時50分 開院前に電話が鳴ります。IVRが「本日の受付は9時からです。ご予約の方は1を押すと、お名前とご希望日時を伺います」と案内し、患者さんは伝言で予約希望を残します。
10時30分 施術中に二件続けて電話がかかってきました。一件は営業時間の確認だったので、IVRの案内で完結します。もう一件は予約変更で、内容が記録として残ります。
12時15分 受付スタッフは昼休憩中です。この時間に「腰を痛めて動けない、今日診てもらえるか」という電話が入りました。急ぎの相談なので、メニューの「お急ぎの方は0を」から院長の携帯に転送されます。
19時40分 閉院後、仕事帰りの人から翌日の予約の相談が入ります。伝言として残り、翌朝、受付スタッフが一覧を見て順番に折り返します。
この整骨院が導入前の記録で気づいたのは、「昼休みと閉院後の電話を取りこぼしていた」ことでした。だからメニューは「予約」「その他」「急ぎ」の三つだけにしています。選択肢を増やさなかったことが、うまく回っている理由です。
IVR導入方法でよくある失敗と避け方
- あいさつが長すぎる:会社の紹介や注意事項を最初に並べると、お客様は用件にたどり着く前に疲れてしまいます。
- 選択肢が多すぎる:五つ、六つと増えると、最初の番号を忘れられます。迷ったら減らしましょう。
- 人につながらない:どの番号を押しても自動音声しか出ない設計は、不満のもとになります。
- 時間外の案内がない:夜や休日に誰も出ないなら、そのことをはっきり伝え、伝言を受けられるようにします。
- 情報が古いまま:営業時間や休業日が変わったのにガイダンスを直していない、というのはよくある話です。年末年始やお盆など、休業日が変わる時期の前には必ず見直しましょう。
人が電話に出るべき場面
自動化は便利ですが、すべての電話を任せるべきではありません。次のような電話は、できるだけ早く人につながる設計にしてください。
- けがや設備の故障など、急ぎの相談
- 苦情やトラブルの連絡
- 金額や契約内容に関わる込み入った相談
- 自動音声の操作が難しいお客様からの電話
IVRの役割は、人が対応すべき電話に集中できるよう、それ以外の電話を整理することです。「人を減らす」ためではなく、「人が出るべき電話に出られるようにする」ためと考えると、設計の判断がぶれにくくなります。
まとめ:まずは一週間の記録から
IVRの導入は、システムの比較から始めるより、自分の電話を知るところから始めるほうがうまくいきます。明日からできる最初の一歩は、かかってきた電話の時間と用件をメモすることです。一週間分がたまったら、用件を三つか四つにまとめ、どの電話を自動化し、どの電話を人が受けるかを決めてください。そこまで決まれば、どの仕組みを選ぶべきかも自然と見えてきます。
よくある質問
小さな店でもIVRを導入する意味はありますか?
あります。むしろ少人数で回している店ほど、接客中や休憩中に電話へ出られない場面が多く、効果を感じやすい傾向があります。ただし、電話の数が少なく、ほとんどが常連さんとの込み入った会話という場合は、無理に自動化しなくてもよいでしょう。まずは電話の中身を記録して判断してください。
今使っている電話番号のまま導入できますか?
多くの場合、方法はあります。ただ、回線の種類や契約先、選ぶ仕組みによって、転送設定で済むのか、番号の移行や工事が必要なのかが変わります。導入を決める前に、現在の契約内容と、検討しているサービスの対応範囲を確認しておくと安心です。
IVRのメニューはいくつくらいが適切ですか?
一般的には三つから四つ程度が目安です。それ以上になると、お客様が最初の選択肢を忘れたり、どれを押せばよいか迷ったりしやすくなります。どうしても分けたい用件が多いときは、よくある用件だけをメニューにし、それ以外は「その他」としてまとめて人や伝言につなぐ形がおすすめです。
押しボタン式とAIの電話受付、どちらを選べばいいですか?
用件が決まっていて、振り分けが主な目的なら押しボタン式で十分なことが多いです。予約の受け付けや伝言など、お客様の話を聞き取って記録する電話が多いなら、会話で対応できるAI電話受付が向いています。お客様の年齢層や、どれくらい操作に慣れているかも判断材料にしてください。
Ringhumは、押しボタンのメニューではなく、会話で電話を受けるAI電話受付です。24時間電話に出て、予約や注文、伝言を受け付け、WhatsAppでのやり取りにも対応します。急ぎの電話や込み入った相談は人へ引き継ぐ前提で使うのが向いています。料金は料金ページで、設定の流れはヘルプセンターで確認できます。