賃貸物件を管理していると、電話は営業時間に合わせて鳴ってはくれません。平日の昼は内見の予約や契約の相談、夜になると「お湯が出ない」「鍵をなくした」という連絡が入り、週末には上の階の騒音への苦情が届きます。少人数で回している管理会社や不動産会社ほど、担当者の携帯電話が事実上の24時間窓口になっている、というのはよくある話です。
賃貸向けの24時間電話対応サービスは、こうした営業時間外の電話を取りこぼさずに受け、内容を整理して、本当に急ぐものだけを担当者や協力業者につなぐための仕組みです。大切なのは「夜中にすべてを解決する」ことではありません。「今すぐ動くべき電話」と「翌朝で間に合う電話」を確実に仕分けることです。
この記事では、賃貸の現場で夜間・休日にどんな電話が来るのか、取りこぼすと何が起きるのか、導入前に決めておくべきこと、そして人が対応すべき場面を具体的に整理します。
賃貸で24時間電話対応が必要になる場面
営業時間外にかかってくる電話は、大きく二つに分かれます。
入居者からの電話
- 水漏れ、トイレのつまり、給湯器やエアコンの故障
- 鍵の紛失や閉め出し
- 騒音、ゴミ出し、共用部の照明切れなどの生活トラブル
- 更新や退去の手続きについての質問
入居者は困ったその瞬間に電話をかけてきます。設備の故障は時間を選ばず、特に水回りのトラブルは放っておくと被害が広がりやすいものです。
入居希望者やオーナーからの電話
- 物件の空き状況や初期費用の確認
- 内見の予約や日程変更
- オーナーからの修繕や入居状況の問い合わせ
部屋探しは仕事の後や休日に進める人も多く、その時間帯に電話がつながらないと、問い合わせはそのまま別の会社へ流れてしまいます。
電話を取りこぼすと何が起きるか
時間外の電話に出られないこと自体は、どの会社にもあります。問題は、その後に起きることです。
- 被害が大きくなる:洗面台下の小さな水漏れが、朝までに下の階の天井まで広がることもあります。
- 入居者の信頼が下がる:「困ったときにつながらない管理会社」という印象は、更新をやめる理由のひとつになりかねません。
- 見込み客を逃す:内見の予約はスピード勝負です。留守番電話に残したまま折り返しを待つ人ばかりではありません。
- 担当者が疲れ切る:夜も休日も携帯を手放せない状態が続くと、人が定着しにくくなります。
つまり、24時間の電話対応は「サービスの上乗せ」というより、管理業務の守りの部分だと考えたほうが実態に近いでしょう。
ある管理会社の土曜日:受付があるとこう変わる
地方都市で、社員4人で賃貸物件を管理している小さな会社を想像してみてください。営業は土曜の18時まで。その後の電話は、24時間の受付窓口が受けるようにしています。
- 18時40分:会社員の方から「駅近の1Kはまだ空いていますか」と電話。受付が空室を確認し、日曜11時の内見枠で予約を取り、担当者にメッセージを残します。
- 21時15分:入居者から「洗面台の下から水が出ている」と連絡。受付は物件名、部屋番号、氏名、折り返し先、状況を聞き取り、会社があらかじめ用意した案内どおり止水栓の場所を伝えます。「緊急」に該当するため、当番の担当者にすぐ連絡し、担当者が設備業者を手配しました。
- 23時50分:隣室の話し声がうるさいという苦情。身の危険がないことを確認したうえで内容を記録し、「翌営業日に担当から連絡します」と伝えます。身の危険を感じる場合は110番へ連絡するよう案内する決まりです。
- 日曜9時:出勤した担当者が、夜間の受付内容を一覧で確認。騒音の件は掲示物の準備から始め、内見の予約にはそのまま対応します。
この夜、担当者が起こされたのは本当に急ぐ1件だけでした。残りは記録として朝に引き継がれ、誰の電話も「つながらなかった」で終わっていません。
24時間電話対応サービスを導入する前に決めること
サービスの良し悪しは、ほとんどが事前の取り決めで決まります。次の手順で準備を進めてください。
- 「緊急」の定義を書き出す:水漏れ、鍵の閉め出し、真冬の給湯器停止など、夜間でも動くものを具体的に並べます。迷うものは「緊急」側に入れておくのが無難です。
- 夜間の連絡先と順番を決める:当番の担当者、つながらない場合の二番手、協力業者、すでに契約している駆けつけサービスなどを整理します。
- 入居者に伝える一次対応を用意する:止水栓やブレーカーの場所など、管理会社として確認済みの案内だけを使うようにします。
- 聞き取り項目をそろえる:物件名、部屋番号、氏名、折り返しの電話番号、いつから・何が起きているか。この5つがあれば、翌朝の対応が格段に早くなります。
- 翌朝の引き継ぎ方法を決める:メール、チャット、一覧表など、担当者が必ず見る場所に届くようにします。
- 入居者に周知する:契約時の書類、掲示板、入居のしおりなどで、時間外の連絡先を案内します。
- 試しに電話をかけてみる:平日の夜と休日に、入居者役で実際にかけ、聞き取りと連絡が想定どおりに動くか確認します。
導入で気をつけたいこと
- 何でも「担当から折り返します」で終わらせない:急ぐ電話が埋もれてしまいます。緊急の判定と連絡の流れは必ず決めておきましょう。
- 約束できないことを言わせない:家賃の減額、修繕費の負担区分、契約の可否などは、受付の段階で答えるべきではありません。「担当者が確認します」に統一します。
- 個人情報の扱いを確認する:入居者の氏名や部屋番号を扱うため、記録の保存先や閲覧できる人を事前に決めておきます。
- 既存の契約と重ならないようにする:保証会社や設備会社の駆けつけサービスに加入している物件もあります。どの電話をどこに回すかを整理しておかないと、入居者が混乱します。
人が電話を取るべきとき
AIや代行による受付が得意なのは、聞き取り、記録、内見予約のような定型の対応です。一方で、次の場面は人が対応すべきです。
- 火災、ガスのにおい、漏電の疑い、けが:受付はまず119番やガス会社への連絡を優先するよう案内し、そのうえで管理会社の担当者がすぐに対応します。
- 強い怒りや長引くトラブル:近隣トラブルがこじれている場合など、相手の気持ちを受け止める会話は人のほうが向いています。
- 滞納、退去、契約解除などの繊細な話:言葉ひとつで関係が変わるため、担当者が直接話すべき内容です。
- 意思疎通に配慮が必要な方:高齢の入居者などで聞き取りが難しいときは、早めに人へつなぎます。
受付の仕組みは、人の仕事を置き換えるものではなく、人が本当に必要な電話に集中するためのものだと考えてください。
まとめ:まずは時間外の電話を1週間分書き出す
いきなりサービスを選ぶ前に、営業時間外にどんな電話が、何時ごろ、どれくらい来ているのかを1週間ほど記録してみてください。着信履歴や留守番電話を見返すだけでも十分です。そのうえで「緊急」の定義と夜間の連絡順を紙1枚にまとめれば、どんな受付方法を選んでも失敗しにくくなります。法人としての導入の考え方は会社向けのご案内でも紹介しています。
よくある質問
夜間の電話は全部担当者に転送したほうが安心ですか?
全部を転送すると、担当者が夜通し起こされることになり長続きしません。水漏れや閉め出しなど事前に決めた緊急のものだけを転送し、それ以外は内容を記録して翌朝に引き継ぐ形が現実的です。迷うケースは緊急側に入れる、と決めておくと判断がぶれません。
内見の予約も時間外に受けられますか?
空いている内見枠をあらかじめ共有しておけば、夜や休日でも予約を受けられます。部屋探しは仕事の後に進める人も多いため、その場で日時を確定できると機会を逃しにくくなります。物件ごとの鍵の受け渡し方法など、当日の段取りは担当者が確認するようにしましょう。
緊急駆けつけサービスに加入していても必要ですか?
駆けつけサービスは現場対応、電話受付は聞き取りと振り分けと、役割が異なります。どの電話を駆けつけ先に案内し、どれを管理会社が受けるのかを整理すれば、両方を無理なく併用できます。入居者が連絡先で迷わないよう、案内を一本化しておくことが大切です。
費用はどう考えればいいですか?
料金体系はサービスや地域、受ける電話の量によって大きく異なります。夜間の当番手当や担当者の負担、取りこぼした問い合わせなども含めて比べると判断しやすくなります。まずは時間外の電話の件数と内容を把握してから見積もりを取るのがおすすめです。
Ringhumについて:Ringhumは、24時間電話を受けるAI受付です。入居者からの連絡の聞き取りと記録、内見予約の受付、決めておいた緊急案件の担当者への連絡、WhatsAppでの応答に対応します。火災やけがのような判断が必要な場面や、こじれた話し合いは人が担うべきもので、Ringhumはそこまでの受付を確実にこなす役割です。料金は料金ページ、設定の進め方はヘルプセンターをご覧ください。