夕方のチェックインが重なってフロントに列ができている時間帯に、電話が鳴ります。受話器を取ると英語です。日付や人数を聞いているらしいけれど、早口で聞き取れません。目の前のお客様を待たせたまま、なんとか「One moment, please」と言って保留にする。小さなホテルや旅館では、こうした場面が日常的に起きています。
ホテルの電話対応を英語でこなすのに、流暢な英語力は必ずしも要りません。大事なのは、よく来る用件を把握しておくこと、決まったフレーズを用意しておくこと、そして聞き取れなかったときの立て直し方を知っていることです。加えて、誰も電話に出られない時間帯の受け皿を決めておく必要もあります。
この記事では、フロントですぐに使える英語フレーズ、ある宿の一日を例にした回し方、今日から始められる準備のチェックリストを紹介します。あわせて、人が直接対応すべき電話の見極め方も整理します。
ホテルの電話対応で英語が必要になる場面
海外からの電話の用件は、実はそれほど多くありません。たいていは次のどれかです。
- 空室確認・予約:日付、人数、部屋タイプ、料金
- 到着時間の連絡:「飛行機が遅れて到着が夜遅くなる」など
- アクセスの質問:最寄り駅からの行き方、駐車場の有無
- 設備・サービスの確認:朝食、Wi-Fi、荷物預かり、大浴場の利用時間
- 予約の変更・キャンセル
- チェックアウト後の問い合わせ:忘れ物、領収書
用件の型が限られているので、それぞれに対応するフレーズと宿の情報を用意しておけば、英語が得意でないスタッフでも落ち着いて対応しやすくなります。
英語の電話を取り逃すと何が困るのか
英語の電話にうまく対応できないと、目に見えにくい損失が積み重なります。
空室を電話で問い合わせる人は、その場で決めたいと考えていることが多いものです。電話がつながらなかったり、話が通じなかったりすれば、そのまま別の宿を探すかもしれません。到着遅れの連絡がうまく伝わらなければ、フロントは「来ないお客様」を待ち続けることになり、深夜に到着したゲストは不安な思いをします。
聞き取りの誤りも問題になります。日付をひとつ聞き間違えただけで、ダブルブッキングや部屋の用意漏れにつながりかねません。英語の電話対応は語学の問題というより、予約と顧客体験を守るための業務の問題として考えると、準備の優先順位がつけやすくなります。
ホテルの電話対応で使える英語フレーズ
[ホテル名] の部分を自分の宿の名前に置き換えて、電話のそばに貼っておきましょう。
電話を受ける・用件を聞く
- Thank you for calling [ホテル名]. How may I help you?(お電話ありがとうございます。ご用件をお伺いします)
- May I have your name, please?(お名前をお伺いできますか)
- Could you spell that for me, please?(つづりを教えていただけますか)
聞き取れないとき
- I'm sorry, could you say that again, please?(もう一度お願いできますか)
- Could you speak a little more slowly, please?(もう少しゆっくり話していただけますか)
- Just to confirm, you said... (確認ですが、〜とおっしゃいましたね)
聞き返すのは失礼にはあたりません。わからないまま話を進めるほうが、あとで大きな問題になります。
予約・空室確認
- What dates would you like to stay?(ご希望の日程はいつですか)
- How many guests will be staying?(何名様でご宿泊ですか)
- We have a twin room available on those dates.(その日程でツインルームが空いております)
- I'm sorry, we're fully booked that night.(申し訳ありません、その日は満室です)
保留・折り返し
- Could you hold for a moment, please?(少々お待ちいただけますか)
- May I have your phone number or email address? We'll get back to you shortly.(電話番号かメールアドレスをお伺いできますか。折り返しご連絡します)
電話を終える
- Is there anything else I can help you with?(ほかにご用件はございますか)
- We look forward to welcoming you.(お越しをお待ちしております)
聞き取りを正確にする小さなコツ
- 日付は月名で確認します(「the fifth of March」など)。数字だけで言うと、国によって月と日の順番が違うため誤解のもとになります。
- 人数と泊数は必ず復唱します。
- 最後に「メールで確認をお送りします」と伝えて、書面でも残すようにしましょう。
ある小さな旅館の一日:英語の電話をどう回すか
家族で営む、客室が十数室ほどの温泉旅館を例に考えてみます。フロントに立つのはおかみと若いスタッフの二人で、英語が少し話せるのはスタッフのほうだけです。
8:30 朝食の配膳中に電話が鳴ります。今夜泊まる予定の海外のお客様からで、到着が予定より遅れるという連絡でした。英語担当のスタッフが手を離せないため、おかみが貼り紙のフレーズを見ながら名前のつづりと到着予定時刻を聞き取り、メモの型に書き込みます。
15:00 チェックインが集中する時間帯に、空室確認の英語の電話が入ります。長く保留にすると相手も目の前のお客様も待たせてしまうので、メールアドレスを聞いて「30分以内に返信します」と伝えました。約束どおり、空室と料金をメールで送ります。
21:30 フロントはおかみ一人です。朝に連絡のあったお客様から「駅に着いたが道がわからない」と電話がありました。英語で書いた道案内の一枚を読み上げ、ここで必ず人が対応します。不安を抱えたゲストには、人の声で安心してもらうことが何より大切です。
2:00 時差のある国から予約の問い合わせが入りますが、誰も電話に出られません。留守番電話は日本語のメッセージだけでした。翌朝の折り返しにも出てもらえず、この予約は結局まとまりませんでした。
この一日を振り返ると、日中はフレーズとメモの型でなんとか回せます。課題は、手が離せない時間帯と深夜の受け皿です。
今日からできる準備チェックリスト
- よくある用件を書き出す:過去の英語の電話やメールを思い出し、用件を5〜8種類ほどに分けます。
- フレーズ表を電話の横に貼る:上で紹介したフレーズを、自分の宿用に書き換えておきます。
- 宿の基本情報を英語で一枚にまとめる:住所、最寄り駅からの道順、チェックイン・チェックアウトの時刻、駐車場、朝食の時間、キャンセル規定などです。
- 聞き取りメモの型をつくる:名前(つづり)、日付、人数、泊数、連絡先、用件、折り返し期限の欄を用意します。
- 折り返しのルールを決める:誰が、いつまでに、電話とメールのどちらで返すのかを決めておきます。
- 留守番メッセージを英語でも用意する:日本語のあとに、短い英語の案内を入れておきます。
- 夜間・繁忙時の受け皿を決める:転送するのか、メッセージを受け付けるのか、自動で応答するのかを決めます。
- 大事な内容は書面で確認する:予約や変更は、メールやメッセージアプリでも確認を送ります。
避けたいこと
- わかったふりをして「Yes」と言う:内容を確認しないまま同意すると、トラブルのもとになります。
- 「No English」と言って切る:相手は二度とかけてこないかもしれません。せめて連絡先を聞くか、メールでの連絡を案内しましょう。
- 長すぎる保留:国際電話の場合、相手には通話料もかかります。1分以上かかりそうなら、折り返しに切り替えましょう。
- 料金や条件を口頭だけで伝える:キャンセル料や税・サービス料の扱いは、必ず書面で残します。
人が対応すべき電話
フレーズ表や自動応答で十分な電話もあれば、そうでない電話もあります。次のような電話は、できるだけ早く人が対応してください。
- 宿泊中のゲストの体調不良やけがなど、緊急性のある連絡
- 苦情や、滞在中のトラブル
- 返金やキャンセル料をめぐる交渉
- 重いアレルギーや介助が必要な方など、細かな配慮が要る要望
- 団体予約や貸切など、条件の調整が必要な相談
反対に、空室確認、アクセス、チェックイン時刻、到着遅れの受付といった定型の用件は、仕組みで受けやすい電話です。夜間や繁忙時にこうした電話を受ける手段として、AI受付を使う宿も出てきています。ホテル向けの使い方は Ringhum のホテル向けページ で紹介しています。
まとめ:まず今週やること
ホテルの電話対応を英語でこなすには、英語力を一気に伸ばすよりも、仕組みを整えるほうが近道です。今週はまず、フレーズ表と英語の基本情報シートを一枚ずつ作って電話の横に置き、聞き取りメモの型を決めてください。そのうえで、深夜や繁忙時に鳴る英語の電話を誰がどう受けるのかをスタッフで話し合いましょう。そこまで整えば、残る課題は「誰も出られない時間」だけになります。
よくある質問
英語が苦手なスタッフでも電話対応できますか?
できます。電話の用件は空室確認や到着時間の連絡などに偏っているため、フレーズ表と聞き取りメモの型があれば、基本的な対応は可能です。大切なのは、聞き取れないときに遠慮せず聞き返すことと、難しい内容は連絡先を聞いてメールで返すことです。完璧に話すことより、確実に記録して返答することを優先しましょう。
相手の英語が聞き取れないときはどうすればいいですか?
「Could you speak a little more slowly, please?」とゆっくり話してもらうよう頼み、名前は「Could you spell that?」とつづりで確認します。日付は月名で、人数と泊数は必ず復唱しましょう。それでも難しければメールアドレスを聞き、文章でやり取りに切り替えると間違いを防げます。
夜間にかかってくる英語の電話はどうしたらいいですか?
少なくとも、英語の留守番メッセージで翌朝の折り返しやメールでの連絡を案内しておきましょう。夜間に予約や問い合わせを取りこぼしたくない場合は、転送先を決めるか、自動で応答して用件を記録する仕組みを使う方法があります。ただし、緊急の連絡は人につながるようにしておくことが前提です。
中国語や韓国語など、英語以外の電話にはどう備えればいいですか?
考え方は英語と同じです。よく来る用件を整理して、宿の基本情報をその言語でも用意しておきます。ただし、すべての言語でスタッフが話せるようにするのは現実的ではありません。メールやメッセージアプリでのやり取りに誘導するほか、多言語で応答できるサービスを検討するのも一つの方法です。対応している言語はサービスによって異なるので、事前に確認してください。
Ringhum について:Ringhum は、ホテルや旅館の電話に24時間応答するAI受付です。空室確認や予約の受付、到着時間の連絡、伝言の記録といった定型の用件に対応し、WhatsApp での返信も行います。緊急の連絡や苦情など、人が対応すべき電話はスタッフに引き継ぐ前提で使うのがおすすめです。料金は 料金ページ、設定方法は ヘルプセンター でご確認いただけます。