チェックアウトの精算が続く朝のフロントで電話が鳴ります。目の前のお客様に「少々お待ちください」と伝え、受話器を取ると「来月の土曜日、二名で空いていますか」というお問い合わせ。小さなホテルや旅館では、毎日こうした場面が何度もあります。
ホテルの電話対応は、お客様がその宿に抱く最初の印象を決めることがよくあります。その一本が予約につながるかどうかも、受け答えに左右されます。この記事では、ホテルや旅館の電話対応の例を場面ごとに紹介します。予約、空室確認、変更・キャンセル、道案内、宿泊中のご要望、クレームの六つです。あわせて、避けたい言い方と、人が必ず対応すべき電話の見分け方もまとめました。
例文はそのまま使える形にしていますが、宿の格や客層、地域によって合う言葉遣いは変わります。自分の宿の言葉に置き換えて使ってください。
ホテルの電話対応の基本:最初のひと言で伝えること
電話を取ったら、まず名乗ります。お客様が「正しい所に掛かった」とすぐにわかるようにするためです。
例:「お電話ありがとうございます。○○ホテル、フロントでございます。」
営業時間外の時間帯や、館内の別の部署から転送する場合も同じです。基本の流れは次のとおりです。
- 宿の名前と部署を名乗る
- 用件を聞き、要点を復唱する
- 必要な情報(日付、人数、お名前、連絡先)を確認する
- 次に何が起きるかを伝える(予約確定、折り返し、確認メールなど)
- お礼を言い、相手が切ってから受話器を置く
声のトーンは少し明るめが目安です。早口にならないことも大切です。高齢のお客様や海外からのお客様も多いため、日付や金額はゆっくり、区切って伝えましょう。
場面別・ホテルの電話対応例
予約の電話
「ご予約ありがとうございます。ご宿泊日とご人数をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
空室を確認したら、条件をまとめて復唱します。
「○月○日土曜日から一泊、大人お二人様、ツインルーム、朝食付きのプランでございますね。お名前と、当日ご連絡のつくお電話番号をお願いいたします。」
最後に、確定したことと今後の流れを伝えます。「ご予約を承りました。確認のご連絡をお送りしますので、内容をご確認ください。」
空室・料金の問い合わせ
料金は日付やプランで変わるため、曖昧に答えないことが大切です。
「その日でしたら、ダブルルームに空きがございます。料金はプランによって異なりますので、ご希望の内容をお伺いしてご案内いたします。」
満室のときも、代わりの提案をすると次につながります。
「あいにくその日は満室でございます。前日の金曜日でしたらご案内できますが、いかがでしょうか。」
予約の変更・キャンセル
まず予約を特定します。そのうえで、キャンセル規定を事実どおりに伝えます。
「ご予約のお名前とご宿泊日をお願いいたします。……確認いたしました。○日前からはキャンセル料がかかる規定となっておりますが、よろしいでしょうか。」
キャンセル料の扱いは宿ごとに違います。予約サイト経由の予約では、サイト側の規定が適用されることもあります。電話を受ける人全員が同じ説明をできるよう、規定は紙にして手元に置いておきましょう。
道案内・アクセス
「最寄り駅からは徒歩でお越しいただけます。駅の東口を出て……」と口で説明するのは、意外と伝わりにくいものです。
「よろしければ、地図と道順をメッセージでお送りいたしましょうか。」と、文字で送る選択肢を用意しておくと親切です。駐車場の有無や、チェックイン時刻前に荷物を預けられるかどうかも、よく聞かれます。
宿泊中のお客様からの電話
「タオルを追加でお願いしたい」「エアコンが効かない」といった電話です。
「お部屋番号をお願いいたします。……すぐにお持ちいたします。」
対応にかかる時間の目安を添えると、お客様は安心して待てます。
クレーム・ご不満
言い分を途中でさえぎらず、最後まで聞くのが基本です。
「ご不便をおかけして、大変申し訳ございません。詳しくお聞かせいただけますでしょうか。」
すぐに判断できないことは、その場で約束しないでください。「担当の者が確認し、本日中にご連絡いたします」と、期限を決めて折り返します。
ある小さな宿の一日:電話はいつ鳴るか
客室十数室の温泉旅館を例に、ある一日を見てみます。スタッフは時間帯によって二〜四人です。
- 7:30 朝食会場が混み合うなか、宿泊中のお客様から「チェックアウトを延ばせるか」と内線が入る。
- 9:45 チェックアウト精算の列ができている最中に、外線が二本続けて鳴る。一本は取れたが、もう一本は鳴りやんでしまう。
- 12:00 女将が昼休み中に、地元の団体から宴会の相談が入る。担当者不在のため、折り返しを約束する。
- 15:00 チェックインのピーク。「駅に着いたが道がわからない」という電話が重なる。
- 19:00 夕食の配膳中に、来週の予約変更の電話が入る。誰も手が離せず、留守番電話に切り替わる。
- 23:30 フロントの灯りを落とした後、海外のお客様から英語で翌日の空室確認が入る。
どの宿にも、電話を取れない時間が必ずあります。9時45分と19時の電話は、どちらも予約や変更に関わる用件でした。取れなかったお客様は、別の宿に掛け直したかもしれません。
電話の取りこぼしが宿に与える影響
取れなかった電話の多くは、記録に残りません。そのため、どれだけ機会を逃したのか実感しにくいのが厄介なところです。宿にとっての影響は、主に次の三つです。
- 予約の機会を逃す。 直接予約を望むお客様ほど、電話でつながらないと他の宿に流れやすくなります。
- 目の前のお客様への対応が雑になる。 精算中やチェックイン中に電話へ気を取られると、対面のサービスが落ちます。
- スタッフの負担が増える。 折り返しの電話や、留守電の聞き取り漏れの確認に、手間がかかります。
避けたい電話対応
- 名乗らずに「はい」とだけ出る。 掛け間違いと思われやすくなります。
- 「わかりません」で終える。 「確認してご連絡いたします」と、次の行動を示しましょう。
- 長い保留。 待たせるなら、一度戻って「もう少しお時間をいただけますか」と声をかけます。
- 料金や規定をうろ覚えで答える。 後で金額が違うと、クレームの原因になります。
- 復唱しない。 日付の聞き間違いは、予約トラブルの典型です。
人が対応すべき電話
自動化や外部への委託を考える場合も、次のような電話は人が直接受けるべきです。
- 体調不良、けが、災害など、安全に関わる連絡
- 強いご不満や、補償の話を含むクレーム
- 大人数の宴会、法事、結婚式など、細かな相談が必要な予約
- 常連のお客様からの、事情を知っている人でないと答えられない依頼
- 警察、消防、行政などからの連絡
逆に、空室確認、予約受付、アクセス案内、チェックイン時刻の確認のような定型の質問は、決まった流れで答えられます。仕組みに任せても困りにくい電話です。
今日からできる電話対応チェックリスト
- 第一声の名乗り方を一つに決め、全員で揃える。
- 予約時に聞く項目(日付、泊数、人数、部屋タイプ、お名前、連絡先)を紙にして電話の横に置く。
- キャンセル規定、料金の決まり方、駐車場、チェックイン・チェックアウト時刻を一枚にまとめる。
- 保留の目安を決め、それを超えたら折り返しに切り替える。
- 折り返しの約束はメモに残し、誰がいつ掛けるかを決める。
- 一日のうち、電話に出られない時間帯を書き出す。
- その時間帯の電話を誰が、または何が受けるかを決める。
- 人に回す電話の種類を決め、スタッフ全員に共有する。
まとめ:まず「取れない時間」を把握する
良い電話対応は、決まった言い回しと確認の手順があれば、誰でも身につけられます。この記事の会話例を自分の宿の言葉に直し、チェックリストの1〜3を今週中に整えてみてください。
そのうえで、6番の「電話に出られない時間帯」を一週間ほど記録してみましょう。朝の精算時、夕食の配膳時、深夜など、宿によって傾向が見えてきます。その時間をどう埋めるかが、次の課題です。
よくある質問
ホテルの電話は何コール以内に出るべきですか?
明確な決まりはありません。ただ、待たせるほどお客様の不安は増えます。目安を決めて全員で共有するのが現実的です。すぐに出られなかったときは、「お待たせいたしました」とひと言添えてから名乗りましょう。どうしても手が離せない時間帯がある場合は、その時間の電話を受ける仕組みを別に用意しておくと安心です。
満室のときはどう断ればよいですか?
「あいにく満室でございます」と事実を伝えたうえで、代わりの提案をします。前後の日付や別の部屋タイプ、キャンセルが出た場合の連絡などです。提案があると、お客様は断られたと感じにくくなります。ほかの日程でまた検討してもらえる可能性も残ります。最後に、お問い合わせへのお礼を伝えましょう。
英語の電話がかかってきたらどうしますか?
予約、料金、アクセスなど、よく聞かれる質問への英語の答えを短い定型文にして、電話の横に置いておくと落ち着いて対応できます。複雑な内容なら、メールやメッセージでのやり取りを提案するのも一つの方法です。多言語で一次対応できる電話の仕組みを取り入れる宿もあります。
夜間の電話はどうするのがよいですか?
夜間に人を置けるかどうかは、宿の規模や業態によって違います。人を置けない場合は、留守番電話や転送を使うことになります。ただし、留守電にメッセージを残さないお客様も少なくありません。定型の問い合わせは自動で受け、緊急の連絡だけ担当者の携帯に回す、といった役割分担を考えると無理がありません。
Ringhumは、ホテルや旅館の電話に24時間応答するAI電話受付です。空室確認や予約の受付、アクセス案内、伝言の受け取りを行い、WhatsAppでのお問い合わせにも答えます。安全に関わる連絡やクレームなど人が受けるべき電話は、スタッフにつなぐよう設定できます。宿泊施設での使い方はホテル向けのページ、費用は料金ページ、設定方法はヘルプセンターでご確認いただけます。