午後三時。ランチの片付けと夜の仕込みが重なる時間に、厨房の奥で電話が鳴ります。手が離せずに見送った一本が、週末の六名予約だったかもしれません。閉店後の深夜や定休日の朝にも、予約の電話はかかってきます。お客様が電話をかけられる時間は、店の営業時間とは関係がないからです。
飲食店が営業時間外の予約電話に対応する方法は、大きく分けて四つあります。「出ない」「留守番電話で受ける」「ネット予約に誘導する」「電話代行やAIで応答する」です。どれか一つだけが正解というわけではありません。店の規模や客層、受けたい予約の種類に合わせて組み合わせるのが現実的です。
この記事では、それぞれの長所と落とし穴、ある小さな店の一日を使った具体例、準備の手順、そして人が直接出るべき電話の見分け方を順に整理します。
営業時間外の予約電話、実際に何が起きているか
「営業時間外」と一口に言っても、電話が鳴る時間はいくつかに分かれます。
- 開店前の仕込み時間:店にはいても、包丁を握っていて出られない時間です。
- ランチとディナーの間の中休み:仕入れ、休憩、仮眠などで店を空けていることも多い時間です。
- 閉店後の夜:会社帰りに翌週の接待や歓送迎会の店を探す人が、ちょうど電話をかける時間です。
- 定休日や長期休暇:年末年始やお盆の前後は、かえって予約の問い合わせが増える店もあります。
かけてくるお客様の事情もさまざまです。子育て中で夜しか時間が取れない人もいれば、仕事の合間に急いで幹事を任された人もいます。旅行の計画を立てている人や、ネット予約が苦手で電話のほうが安心という年配の常連さんもいるでしょう。
呼び出し音が鳴り続けるだけの電話に、何度もかけ直してくれる人は多くありません。たいていは近くの別の店に電話して、そこで予約を済ませてしまいます。
取りこぼしが店に与える本当の損失
出られなかった電話の損失は、その一件の売上だけでは終わりません。
見えない機会損失。 着信履歴には番号しか残りません。それが予約だったのか、営業電話だったのか、道を尋ねる電話だったのかは分からないままです。
折り返しの手間。 翌日に折り返しても相手が出なかったり、「もう別の店に決めました」と言われたりします。忙しい時間に何本も折り返すのは、それだけで大きな負担です。
人の消耗。 取りこぼしを避けようと、店主が休日も個人の携帯に転送して電話を受けている店は少なくありません。休みが休みにならない状態が続けば、本業の料理や接客にも影響が出ます。
お店の印象。 「何度かけてもつながらない店」という印象は、口コミとして静かに広がることがあります。
主な対応方法と、それぞれの向き不向き
留守番電話で受ける
もっとも手軽な方法です。ただし、留守電にメッセージを残す人はそれほど多くありません。残してもらえたとしても、名前や人数、日時が聞き取れないこともあります。さらに、お客様の側は予約が取れたのか分からないまま待つことになります。使うなら、「何をいつまでに折り返すか」をガイダンスではっきり伝えるのが最低条件です。
ネット予約に誘導する
ガイダンスで予約サイトへの案内を流したり、SMSで予約ページを送ったりする方法です。空席がすぐ分かるので、二名や四名の通常予約には向いています。一方で、ネットが苦手な方や、細かい相談をしたい宴会の幹事には不親切に感じられることがあります。
電話代行や転送
人が応答するので安心感があります。ただ、店のルールや空席状況をどこまで共有できるかで、受けられる内容が変わります。費用や対応時間はサービスや地域によって大きく異なるため、契約前に「予約を確定までできるのか、伝言だけなのか」を必ず確認してください。
AI電話受付
音声AIが24時間電話に応答し、予約の受付、よくある質問への回答、伝言の記録までを行う方法です。通常の予約や「駐車場はありますか」といった定型の質問には強い一方、込み入った相談や繊細な対応は人に任せるべきです。この線引きは後ほど詳しく説明します。
ある一日の例:カウンター中心の小さな和食店
店主と奥さんの二人で営む、カウンターと小上がりの和食店を例にします。昼は11時半から14時まで、夜は17時半から22時まで。月曜が定休日です。
以前のある火曜日
- 10時15分:仕込み中に電話が鳴りましたが、手が離せず出られませんでした。
- 15時10分:中休みで市場に出ている間に着信がありました。後で番号にかけ直しましたが、相手は出ません。
- 22時40分:片付け中に、金曜夜の八名の宴会について問い合わせの電話が入りました。疲れていて出られず、翌朝に折り返すと「別の店で決まりました」と言われました。
- 定休日の月曜:店主の携帯に転送した電話が三回鳴り、家族との外出中に対応することになりました。
電話を受ける仕組みを整えた後の火曜日
- 10時15分:AIが応答し、木曜19時に二名の予約を受け付けました。予約台帳に記録され、お客様にはSMSで確認が届きます。
- 15時10分:「ランチに子ども用の取り皿はありますか」という質問に、店が事前に登録しておいた答えで回答しました。
- 22時40分:八名の宴会の相談です。人数や予算、苦手な食材の話が出たため、AIは要点と連絡先を伝言として残し、「明日の午前中に店主から折り返します」と伝えました。
- 翌朝9時:店主が伝言の一覧を確認し、宴会の幹事に電話をかけて予約が決まりました。
大切なのは、すべてを機械に任せたわけではないという点です。定型の予約は自動で受け、判断が必要な相談は人に回す。この分担が、小さな店にとって一番無理のない形です。
飲食店が営業時間外の予約電話に備える手順
仕組みを入れる前に、次の順番で店のルールを固めておくと失敗が減ります。
- 着信の傾向を一週間見る。 何時ごろに、どんな電話が多いのかを着信履歴やメモで把握します。
- 自動で受ける予約の範囲を決める。 何名まで受けるか、当日予約はどうするか、コース予約やカウンター指定を受けるかを決めます。
- 予約台帳を一つにまとめる。 紙の台帳とネット予約を別々に管理していると、二重予約の原因になります。
- よくある質問の答えを用意する。 営業時間、定休日、アクセス、駐車場、子ども連れの可否、持ち込みの可否などです。
- 人に回す条件を決める。 大人数、貸切、アレルギー、クレームなどです。詳しくは次の章で説明します。
- 折り返しの時刻を決めて守る。 「翌営業日の11時までに折り返す」のように、お客様に伝えられる約束にします。
- 自分で電話をかけて試す。 開業前のリハーサルのつもりで、お客様の立場から何度か試してみてください。
避けたいこと
- 留守電に入れっぱなしで確認しない。 折り返しがないのは、電話に出ないことよりも印象が悪くなります。
- 予約が確定したのか曖昧なまま終わらせる。 「承りました」なのか「確認して折り返します」なのかは、はっきり伝えます。
- 台帳を二重に管理する。 自動で受けた予約が店の台帳に反映されない状態は、もっとも危険です。
- 何でも自動化しようとする。 機械が無理に答えるより、「担当者から折り返します」と伝えるほうが信頼につながる電話もあります。
- 店主一人が休日も電話を抱え続ける。 長く続けられる体制でなければ、いずれどこかで無理が出ます。
人が直接対応すべき電話
自動応答は便利ですが、次のような電話は人が受けるか、少なくとも人が折り返すべきです。
- 貸切や大人数の宴会:予算、料理の内容、席の配置など、相談しながら決める要素が多い予約です。
- 重い食物アレルギー:調理場の状況を知っている人が判断するべき内容です。安易に「大丈夫です」と答えてはいけません。
- 苦情やトラブル:まず人が話を聞くことが何より大切です。
- 当日直前の変更や遅刻の連絡:席の調整は、その場の状況が分かる人にしかできません。
- 取材や取引先からの連絡
自動応答の役割は、こうした電話を確実に受け止め、要点を整理して人に渡すことです。そう割り切ると、仕組みの設計もお客様への説明もずっと楽になります。
まとめ:まずは一週間の着信を見ることから
営業時間外の電話をすべて自分で取る必要はありません。ただし、取りこぼしたまま放っておくのはもったいないことです。今日からできる最初の一歩は、一週間分の着信履歴を見返し、出られなかった時間帯と電話の内容を書き出すことです。そのうえで、自動で受ける予約と人が受ける相談の線を引けば、自分の店に合う方法がおのずと見えてきます。飲食店向けの具体的な使い方は飲食店向けRinghumのページにまとめています。
よくある質問
営業時間外の予約電話は、留守番電話だけでは足りませんか?
留守電にメッセージを残さずに切ってしまう人は少なくありません。残してもらえても、聞き取りにくいことがあります。また、お客様は予約が取れたか分からないまま待つことになります。留守電を使う場合は、折り返す時刻をガイダンスで伝え、その約束を必ず守ることが大切です。予約をその場で確定させたい場合は、自動で受け付ける仕組みとの併用を検討してください。
ネット予約があれば、電話受付は必要ありませんか?
ネット予約は通常の予約には便利ですが、すべてのお客様が使うわけではありません。年配の常連さんや、宴会の相談をしたい幹事の方は、電話を選ぶことが多いものです。電話は、細かい要望を伝えられる窓口として残しておく価値があります。電話とネットの予約を同じ台帳にまとめることがポイントです。
AIが予約を受けると、二重予約にはなりませんか?
受けた予約が店の予約台帳にすぐ反映される設定にしていれば、リスクは大きく下げられます。危ないのは、紙の台帳と自動受付を別々に管理している状態です。導入前に、予約の情報がどこに集まるのかを確認し、自分で何度か試しに予約を入れてみてください。
定休日の電話はどう案内すればよいですか?
次の営業日、受け付けられる予約の範囲、急ぎの場合の連絡方法を短く伝えるのが基本です。通常の予約は自動で受け付け、宴会や貸切の相談は伝言を預かって翌営業日に折り返す、という形にすれば、休日に店主が電話に縛られずに済みます。
Ringhumは、仕込み中や中休み、閉店後、定休日にかかってくる電話に24時間応答し、予約の受付、よくある質問への回答、伝言の記録、WhatsAppでのやりとりを行います。大人数の相談やアレルギーのように人の判断が必要な電話は、要点をまとめて店に引き継ぎます。料金は料金ページで、設定方法はヘルプセンターでご確認いただけます。